聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~はじまりの詩~
「姉様、僕は行くよ」

涙の跡を拭って、唐突にパールが言った。

「行くって…どこへ?」

思わず尋ねたのはカイだった。

「決まってるでしょ、君たちと行くんだよ! 聖具と〈光の人〉を探す旅に!」

「ええ~~!?」

一同の驚きの叫びが朝焼けの空に響き渡る。フレイアは最初心底驚いていたが、やがて笑い出した。それはあの人の心に響く朗らかな笑いだった。

「わかったわ、パール。あなたの好きになさい。姉様、寂しいけど、応援してるから」

「い、いいのか!? フレイア」

フレイアの言葉にザイドが目を剥く。フレイアは満面に笑みを浮かべながら頷く。

「私の大切な友達、リュティアを守ってあげてね」

「はい――姉様」

フレイアとパールの二人は再び堅い抱擁をかわした。話についていけていないのはカイである。ちなみにアクスはどこ吹く風だ。旅の仲間が一人増えようが、栄養指導できさえすればそれでよいのかもしれない。

「ほ、本当に、こいつがついてくるのか? いいのか、リュー」

しどろもどろのカイの問いかけに、リュティアはにっこりと笑って大きく頷いて見せた。

「はい! よろしくお願いします、パール」

リュティアの思考回路は単純だった。リュティアの大切な友人の大切な人なら、もう友人だ。友人の希望なら聞いてあげたい。

パールはわずかに頬を上気させ、その顔を満足げにほころばせた。

「えへへ、乙女(ファーレ)ならきっとそう言うと思った。よろしく!!」




新たな四人の仲間たちの背を、朝日がまばゆく照らし出す。

プリラヴィツェへ向けて、彼らはそれぞれに不揃いな一歩を踏み出した。

リュティアの遠慮がちな一歩、カイの誠実な一歩、アクスの大股の一歩、パールの小さな一歩が、新たな道をつくっていく。


―すでに目的地の聖具“虹の錫杖”が破壊されていることを、彼らはいまだ知らなかった。
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