クラッシュ・ラブ
先に声を上げたのはユキセンセ。その驚きようにびっくりしたわたしが、続いて声を上げた。
そ、そんなに驚かせた? わたし……。まぁ、確かにこんな朝に机の真ん前に突っ立ってたら驚いても仕方ないのかな……?
おどおどとしながらも、わたしは横にずれて、ひとこと挨拶を口にした。
「おはようございます」
「え? ああ。お、おはよ」
……あれ? なんか、違くない?
わたしは、目の前に立つユキセンセをじっと見る。
昨日と今の違いってなんだろう。そう思いながら、間違い探しをするかのように。
髪……は、相変わらずぼさぼさだし、メガネもかけてるし……。
服、も昨日のままだし。
首を傾げながらひとつひとつ考えていると、ユキセンセが口を開く。
「……昨日はどうも。ええと……ごめん。名前、なんだっ……け?」
そんな質問を口にしたユキセンセを見て、わたしは気付いた。
あれ? なんか、すごい……“まとも”だ。
いや、そんな言い方って失礼なんだけど。でも、ホント、そんな感じ。
昨日までの取っつきづらい雰囲気が無くなって、なんか普通の男の人になってるんだもん。
ぽかん、と、くしゃくしゃの前髪をした顔を見上げる。
あ、無精ヒゲ。
――なんてことも発見できるくらいに、真正面から向き合えるのは、昨日と違って近づきやすい雰囲気に感じるから。