クラッシュ・ラブ

「あっ、す、すみません……あの、名前は向井です。向井美希です」


まじまじと見てしまった気まずさをごまかすように、わたしは思い切り頭を下げた。


わ。綺麗な足。指も長い……あ、そういえば、手の指も長くて綺麗だったなぁ。


「そっか。ミキちゃんだったね」


その声に導かれるように顔を上げる。
メガネのガラス越しに目が合うと、ユキセンセはくしゃっと目尻を下げて笑った。

朝陽が横顔を照らしてるせいかな。その笑顔がすごく輝いて見えるのは。
昨日は全くそんなふうに感じること、なかったのに。


「いや、本当ごめん。あんま寝てなかったから……今は頭すっきりしてるから、もー大丈夫。忘れない」


話してる間、ずっと目を逸らさずいられると、わたしも逸らすことが出来なくて彼を見つめてた。

背も、おっきいな、やっぱり。昨日、寝室に行くのに一瞬だけすれ違ったときに、そう思ったけど。
それに、目。なんていうんだろう。なんか、可愛い感じ。大きいとかそういうことじゃないんだけど……“無垢”っていうか、淀んでない。


「いえ……お忙しそうですね」


吸い込まれそうな瞳に、なんとか会話を繋げる。



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