クラッシュ・ラブ

「あのコはさ。初めはただ単なる脇役で。全然考えてなかったわけではないけど、主役ほど考えることもなかったキャラ。でもね」
「?」


突然そのファンレターを渡されて、戸惑いながら受け取る。

どうやらわたしも見てよさそう……。

雪生の目でそう判断して、今度はわたしが手紙に視線を落とした。


「美希と会ってから、美希が言うように、どこか重なる部分があって。自信ないとことか、一生懸命影でサポートしてるのに、絶対前には出てこない性格とか。
そういうふうに思ってたら、自然に愛着が湧いたんだね。今までよりも」


耳では雪生の声を聞き入れながら、ゆっくりと手紙の文字を丁寧に追う。
何通か渡されたけど、ぱらっと見た感じ、筆跡的にみんな女の子からだ。

可愛らしい便箋に綴られた雪生への想いを、少しだけ覗かせて貰う。すると、中盤でこんなことが書かれてた。


【最近スポットあてられてる“あゆみ”が、すごく可愛く見えてきました! 前までは印象薄かったんですけど、今は彼女も応援してます!】


……へぇ! わたしだけじゃないんだ。“あゆみちゃん”に目が行くの。でもたくさんの読者さんがいるわけだから、わたしと同じ人だってひとりくらいいるよね!

特に深く考えないで、次の人の手紙に目を通す。


【あゆみちゃんが報われてよかった! どうかこのまま羽生くんとくっつけてあげて!】


……あれ? これにも?
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