㈱恋人屋 ONCE!
その時、私の唇に菜月くんの唇が重なり合った。
「…!」
突然のことに、声が出ない。身動きができないまま、ガチガチに固まってしまっている。でも、これ以上にないくらい幸せな味がする。
唇が離れる。
「キスしたかったんだろ?だったら、正直に言えばいいのに。」
「…馬鹿。」
そうこうしているうちに、順番が回ってきた。
「では、こちらにどうぞ。」
私達が乗ったのは、幸か不幸か一番前の席だった。
「ふぅ…。」
大きく息を吐く。緊張しているのが手に取るように分かる。
「もしかして紗姫…こういうの苦手か?」
「…苦手じゃないもん。」
怖いだけだもん。
「プルルルル…。」
発車の合図が鳴り響く。緊張はさらに大きさを増していた。
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