【完】君と、前へ。
暗い中で、月明かりだけがただ一つの光。
その光が海斗のハッとしたような顔を照らす。
「……ごめんね、海斗
意地悪なこといったね…。
こっちへおいでよ」
海斗はだまって靴を脱ぎ、私と同じように海に足をつけた。
「奈津…ごめん…」
「ふふっ…私たちってあの頃から謝ってばっかりだね。」
最初に謝ったのは、私だった。
まだ付き合いたての頃、
海に振り向いてほしくて無理をいって困らせたわがままから謝ったごめんなさい。
海斗が大遅刻して、必死に私に謝ってきたごめんなさい…。
「多くの出来事があったね…」
「奈津は無茶振りばっかり言ってて、俺は困ったな」
「海斗が甘やかすのが悪いんだよ」
「そうだけどさ…、
あ、あの事もあったよな…あんな事も…」
「海斗」
海の声を遮るように私はあなたの名前を呼ぶ。
「あの頃には、戻れない…」