ベランダ越しの片想い
「咲歩」
「なに」
「明日、放課後どこか行こうか。
シフォンケーキのお礼に甘いものでも奢るよ」
「アキちゃんってば優しーい」
「棒読みもちゃんづけも辞めろ。
そんな冗談似合ってない」
「ふふ、失礼ね。
わたしだってたまには、アキの前くらい冗談だって言うわ」
「……結局どうする?」
「行くわよ。楽しみにしてる」
「うん。……俺も」
画面を見たまま、言葉だけ。
ホラーを見ながらするような会話じゃないけど、わたしたちらしいと思い、またくすりと笑ってしまった。
映画はおわり、一緒にレンタル店まで返しに行って。
また新しく借りてきたものもふたりで見た。
その日の夜、ベランダ越しに見た彼はもう今朝とは違っていつも通りで。
それがとても嬉しかった。