ベランダ越しの片想い
「咲良の幸せは桜田のそばにあるんだなって。そう思えたのは咲歩のおかげだよ」
「わた、し?」
「咲歩がいたから、ゆっくりでも咲良のことを過去のことにできたんだ」
そっと顔を上げて、前髪のかからないクリアな視界で見た彼は、なんて優しく笑っているんだろう。
「いつもお菓子ありがとう」
突然のことに困惑するわたしの髪をさらりとアキが梳く。
「傷つけてばかりの俺を好きになってくれてありがとう。
俺の知らないところでも想ってくれてありがとう」
「っ」
「なにも言わず、ずっとそばにいてくれた咲歩のことが、好きだよ」
ああ、────わたしの『好き』は無駄じゃなかったんだ。
あっという間に滲んできた涙は止めることもできず、いくつも頬を転がり落ちていった。