ベランダ越しの片想い








ずっと、わたしの独りよがりだと思っていた。



そばにいるのも、なにもかも、わたしが勝手にしていたこと。

アキはひとりになりたいかもしれないのに、わたしが彼をひとりにしたくないからって離れなかった。



だけど、それが確かにアキの支えになっていたというのなら────こんな幸せなことはない。



穏やかな気持ちでまたベランダに立てたことが嬉しい。

涙が出そうなほどの幸せを噛み締めて、久しぶりに心からの笑顔を空に向ける。



「なに笑ってんの?」



わたしの隣で不思議そうな表情を向けてくるアキに「内緒」と首を振った。





……こんな風に和かに会話を交わしているからと言って、これからに不安がないわけじゃない。

清水さんへの想いをあれだけ見てきた身としては、どうしたって信じられない部分も多い。



それでも、ここにあったはずの壁も、心のしこりも、哀しい涙も。

取り除いてくれたのは、アキだから。



信じたいと、信じられると思うの。







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