プリンセス☆ロード
「あ―あ、そうやって、物にあたるのも、変わってない」
「俺は、…人を好きになんてならない。もう、そう決めたんだ」
「…バカだね、君は。それで誰がうかばれるっていうんだ」
苛立ちを隠せず口調が荒くなるレンに対し、全く動じず変わらないセリム。
そのことがさらにレンを追い詰める。
ランプの割れた音を聞きつけた家来が駆け寄る足音が近づいてくる。
「セリムさま!?何か一大事でしょうか?」
「ああ、ランプを倒してしまっただけだよ。片づけておくから、心配しないで」
「片づけなら我々が…!」
「ううん、平気。ありがとう」
「で、では…何かありましたらお申し付けください」
セリムは流暢にやってきた家来を返す。
それは、一国の王として、凛とした対応だった。
我を忘れ、感情をむき出しにした自分を情けなく思う。
「俺は、お前みたいに冷静でいられない。そんな風に、堂々となんて、できない」
「…君はいつまでそうやって罪悪感を背負っていくつもりだい?」
「は?」
「そうやって自分を戒めていれば楽だろうね。でもそれは自己満に過ぎない。誰も褒めてはくれないよ」
「じゃあ、俺はどうしたらいいんだ」
「それでも君は生きてるじゃないか。今度はあの彼女を守りたいと心が生きてるじゃないか」
どちらが、幸せなのだろう。
どちらが、不幸なのだろう。
「何にも、興味がわかないんだよ。この国の動向にも、この世界の状況にも」
「…セリム」
「だから、君が羨ましいと思うよ。君は、自分の信念を持って、騎士としてここにいる。すべてを隠してまで。それは、愛国心からだろう?自分が国を守りたいという、国を思う気持ちからだろう」
「…そうしていないと、すべてに押しつぶされそうなんだ。でも、これが正しいのかわからない」
「正しい?なにが正しいんだろうね」
今、王としてここにいる自分。
騎士としてここにいるレン。
正しいかどうかなんて、誰が決めるのだろう。