そのとき僕は


「おい?」

 一人で立ち止まってしまった僕を、友達とジャスミンが振り返る。

「どうした、行こうぜ」

 友人の怪訝そうな声を聞いて、僕はようやく彼らに向き直った。そして、手をあわせる。

「ごめん、知り合いを見つけたんだ。挨拶だけしてくるから・・・先にいってて」

 すぐそこだから、そう言って神社までの道筋を教える。頷いた友人がチラリと空き地の方を見た。それから何やらにやりと笑って言う。

「あの女の子?こっちみてるな、確かに。へえ、お前が女の子とねえ!」

「悪いね」

「ゆっくりでいいぞ~」

 ニヤニヤとしながら、友達はジャスミンを促して歩き出す。僕はすぐに踵を返すと、あの空き地へとまっしぐらに進んで行った。

 まさか。

 まさか。

 だけど、あの人だ。

 背格好も、それから立ち位置も――――――――


 緊張して急に喉が渇きだしたのを感じる。僕は走るようなスピードで、空き地に近づいていく。

 視界がハッキリしてきた。

 確かに、あの人だった。


< 33 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop