Amarosso~深い愛~の作り方♪
怜士は短く息を吐くと、手のひらに爪をたてて握り締めていた拳をやっと解いた。
足早に歩き始めたが、後ろからアイーシャがついている気配はした。
速度の加減はしない。
どうせ駅のホームで追いつくだろう。
だがその途中で、いつかのようにビルの壁に寄りかかり、煙草を吸っている姿をみつけた。
シルクの光沢のあるブラウスにタイトスカート。
更に上に毛皮のコートを羽織っている。
怜士を認めると、サングラスを外した。
思わずため息をついた。
この人が出てきたとなると、やっぱり何かあった。
足を止めたままなのに、追いついたアイーシャは怜士を見上げ、視線の先を見た。
真っ赤に塗られたくびちるの両端を上げて、ピンヒールの音を響かせて歩み寄ってくる。
「怜士。
久しぶり」
柔らかな物言いで、婉然と笑う。
「そうですね」
こちらは胡散臭げに返した。