Amarosso~深い愛~の作り方♪

怜士は短く息を吐くと、手のひらに爪をたてて握り締めていた拳をやっと解いた。

足早に歩き始めたが、後ろからアイーシャがついている気配はした。

速度の加減はしない。

どうせ駅のホームで追いつくだろう。

だがその途中で、いつかのようにビルの壁に寄りかかり、煙草を吸っている姿をみつけた。

シルクの光沢のあるブラウスにタイトスカート。

更に上に毛皮のコートを羽織っている。

怜士を認めると、サングラスを外した。

思わずため息をついた。

この人が出てきたとなると、やっぱり何かあった。

足を止めたままなのに、追いついたアイーシャは怜士を見上げ、視線の先を見た。

真っ赤に塗られたくびちるの両端を上げて、ピンヒールの音を響かせて歩み寄ってくる。


「怜士。
 久しぶり」


柔らかな物言いで、婉然と笑う。


「そうですね」


こちらは胡散臭げに返した。
< 241 / 273 >

この作品をシェア

pagetop