こころ
初体験
カウントダウンの日は海遊館に行った。
魚がいっぱいではしゃぐ辰士につられて自然とあたしもはしゃいでしまった。

「俺、麻姫のことめっちゃ好きやから」

いつも照れずに自然体で愛を現す辰士が好きだった。

「じゃあどんくらい好き?」

ちょっと聞いてみた。
そしたら辰士は両手で20センチくらいの幅を空けて

「こんくらいッ!!」

なんて言ったからあたしはちょっと怒り気味で「少な〜」ってしょげた。
そしたら辰士は

「でもな、地球はこんくらいやで!!」

って、真ん中に米粒くらいの大きさの地球を現した。

「…あははッ何それ!!」

はにかんだ笑顔ばかりさせてくれる。

こんなロマンチックというかさぶいセリフをさらっというんだこの人は。


この日は帰りにホテルに行った。
あたしは初体験だったからすごく緊張したけど、カラオケなんて歌って緊張を和らいでくれた。

ひとつになったとき、愛もひとつになったような気がした。

おわったときにちょうど流れたのが「君を想うとき」だった。
大量にカラオケを入れてた中のあたしが好きな曲だった。

「俺知ってるわコレ!!」

歌いだした。

なんて優しい歌い方するんだろ。
なんでこんな心にしみるんだろ。
この曲はこれからのあたしたちにとって最大の思い出の曲になったんだ。

つき合って10日で初体験なんて早すぎたかもしれないけど、早く繋がりたくて仕方なかったんだ。
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