神様の悪戯

「お目覚めですか?」

次にアリシアが眼を覚ましたとき、近くにいたのは女性だった。

使用人だろうか、動きやすいドレスを着、髪をアップにしている。
彼女は部屋のカーテンを開けていたようだ。

アリシアは、起き上がろうとしたため、あわてて女性がアリシアを支える。

「いけません、姫様。お腹の傷もまだ直っていません。身体中の傷も癒えるまでは暫く寝ていなければ。」

女性は、優しく毛布を掛ける。

「ありがとう…貴女は?」
「私はナーガ。姫様の世話役です。」

ナーガはニッコリ笑うと、再び窓に近寄り、窓を開けた。
風が心地よくアリシアの肌に触れる。

「私はどうやってここに?」
振り返ったナーガは、少し困った顔をする。

「姫様が此方に来たのは3日前です。盗賊に襲われ運ばれてきました。」
「他の者は?」
「生きていたのは、姫様と…」
「じいさんの二人だ。」

会話に割り込んで来たのは、昨日の夜に会話した男性だった。確か、ルークといってたような。

「若様、あまり良い振る舞いでは無いですね。レディの部屋に入ってくるなんて。」
「あぁ、そうだったな。」

悪いとは全く考えて無いようで、アリシアに近づく。

「意識は戻ったようだな。」
昨日見たときは薄暗く顔がはっきり見ることはできなかったが、明るい中では彼の顔がはっきり見える。

黒髪に空のような青い瞳。
身体も鍛えているのか、胸元が空いた服から鍛えた胸元が見える。

そして、また菫の香りだ。
彼の好きな香りなのだろうか。

「助かったのは、じいさんと君だ。じいさんも足を怪我しているが、それ以外は元気そのものさ。」
「彼には会えますか?」
「あぁ、君が目覚めるまでは待つようにと言ったので、毎日催促されてかなわんかったよ。」

近くに座って、アリシアを見つめる瞳は優しいものだったが、見つめられるのも恥ずかしいものである。

「姫様は目覚めたばかり。若様はお引き取り下さいな。」
ナーガに言われて、ルークは席をたった。

「身体が回復するまでは、ここにいるといい。困った事があったらナーガに言ってくれ。」
そう言うと、ルークは足早に部屋を去った。
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