きっともう大丈夫

再会

「沙希(さき)さん・・・・・だよね?」
打ち合わせが終わり店に戻る途中いきなり若い男性から声を掛けられた。
はて?以前受け持ったお客様だったか?
でも・・・それなら名前ではなく名字で呼ぶだろう。「雪村さん」とか・・・
もしくは花屋の人とか・・・
それが名前で呼ぶってことは知り合いってこと?
でも私を名前で呼んだその人はどこから見ても私よりかなり年下だった。
とても整った顔立ちで、身長も高く俗に言うイケメンってやつだ。
でも私の記憶の中にこんな若くてかっこいいイケメンの存在は皆無だった。
「そうですが・・・・もうし訳ありませんがどちら様でした?」
それしか言いようがなかった。
その言葉に、目の前にいるそのイケメンは、思いっきり落胆の顔を見せながら大きなため息をついた。そして
「やっぱりねー憶えてないわな~そうだよな~」
とぶつくさとつぶやいた。
いやいや、そんなこと言われても知らないものは知らないし、もし以前担当したお客さまだったとしてもだ、知ったかぶって相手の話に合わせて相槌うっても
必ずどこかでぼろがでる。
でも彼の落胆ぶりはわかりやすかった。
何か言ったほうがいいのか?どうしようか悩んでるとそのイケメンは
とんでもない事を言った。
「9年前、雑貨屋で店長してた、雪村沙希さんだよね。」
なんでこの人私の過去の職業知ってるの?
だって9年前よ。たしかに私は昔短い期間ではあったが女性に人気の雑貨店の店長だった
思いっきり雇われだけどね。
そんなレアな過去を知ってる人と言えば、開店準備を手伝ってくれた友人と、一緒に働いていた同世代の女の子、取引先の担当さん・・・
でもほぼ女のひと・・・・
あれ?・・・・待てよ・・・そういえばもう一人いや二人いた。
店に不釣り合いな常連の高校生・・・・そこでハッとした。
「あっ!思い出した」
するとそのイケメンの目に光が宿り満面の笑顔で顔をあげた。
「思い出しました??!」
「常連高校生君?!」
イケメン君は思いっきりがくっと肩を落とすリアクションをした。
「え~~!当たってるけど、常連高校生って・・・常連高校生かよ・・・あー最悪」
露骨に不満顔で私を見るとがっくりと肩を落とした。
「俺は沙希さんの事憶えてたのに・・・俺は常連高校生なんだ」
さっきにもまして不満顔だ。せっかくのイケメンが私のせいで台無しかも・・・
「・・・・・前野春斗(まえのはると)・・・・・ハルです。思い出せますか?」
その名前を聞いておぼろげだった記憶に閃光がはしった。
前野春斗・・・・春斗・・・・ハル君・・・
思い出した!そうハル君!

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