きっともう大丈夫

かさぶた

「雪村さん、今のうちにお昼休憩入ってくれる?」
「はーい。じゃあお先にいただきまーす」
店の裏口横にあるベンチに座りお弁当を広げる。
「いただきます」
小さく手を合わせて手作りのおにぎりを食べる。
私は3カ月前に鈴木から雪村に戻った。
もっと早く離婚が成立するかと思ったんだけど
明良が渋った。
急な展開に心が追いつけなかったのかもしれない。
じゃあ私は吹っ切れたのかと聞かれたら
イエスとはいえないかもしれない。
何かに没頭することで現実から逃げているのかもしれない。
離婚の話は詩織と一海さんにほとんど任せてた。
詩織に関してはいつ、明良と菜々美に飛びかかるかわからないから
一海さんが明良と連絡を取り合ってたらしい。
慰謝料はもらわなかった。
詩織はかなり怒っていたけどね。もらえるもんはもらっとけって・・・
詩織らしいと言えば詩織らしい。
先日、一海さんから明良たちの子どもが生まれたと聞いた。
正直、怒りはもうなかった。
それよりもちゃんと子どもを産んでくれたんだって思いの方が
大きかった。
明良の子どもが欲しいって夢を私は叶えてあげれなかったからかな
って詩織に言ったら、
「この!お人よし」ってまた怒られた。
私は最近、一人暮らしを始めた。
そしてあと2か月ほどで詩織のお店がオープンする。
私はオープンするまでの間だけ詩織の知り合いの花屋で
アルバイトをしている。
今まで住んでた場所からずいぶん離れているため
明良や菜々美と会うことはなかった。
でもこのアルバイト生活もあと1カ月。
久しぶりに詩織と一緒に働けることを心から待ちわびている。
第2の人生のスタートと思って頑張らないと!
そう思い残りのおにぎりを一気に食べた。
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