きっともう大丈夫
私たちは裏口横のベンチに座った。
「お店はどう?順子さんたちは元気?多恵ちゃんたちはまだ
働いてるの?」
「店はまーまーかな。姉貴も元気だよ。この花も姉貴に頼まれたんだ。
スタッフは・・・様変わりしたよ。みんな結婚したりしたしな」
そうだよね。
みんな結婚して当然の年齢だよね。
あれから一度も連絡を取らなかったから・・・
「・・・・お前は?」
「ん?」
「お前はその・・・結婚したの?」
ちらっと名札を見られたような感じがした。
「してたよ。でも離婚しちゃったー」
圭吾の顔をまともに見れず、流れる雲をじっと見つめた。
「あ!悪いこと聞いたかな?・・・まーおれもお前と同類だけど・・」
その言葉に驚き圭吾を直視してしまった。
「え!圭吾も?」
圭吾は苦笑いしながら頭をかいた。
「2年たつかな~~。やっぱさー俺って結婚むいてないんだろうなー」
「今頃気づいたの?」
私の言葉に同時に笑いがこみ上げた。
「どうしても家庭や女より趣味をとっちゃうんだよな」
圭吾らしいと素直に思えた
彼に対して何の感情も持っていないことに安堵する。
「じゃーまだバンドやってんだ」
圭吾はテレながら頷いた。
「私は旦那がよそで子ども作っちゃっんだよね。ふふ・・笑っちゃうでしょ」
圭吾に笑い飛ばしてほしかった。理由はわからない。でも彼は・・・
「沙希・・・今は傷がふさがってないかもしれないがそのうち
そこにかさぶたができ、そのかさぶたは自然に剥がれ傷も見えなくなる
ただ、かさぶたってさ無理に剥がそうとするとまた血が出るだろ
無理に剥がす必要はないからはがすんじゃねーよ、自然に剥がれるまで
触るな・・・」
まさか昔の恋人に慰められるとは
「ありがと。」
そういうと圭吾は時計をみて立ち上がる。
「やべ!姉貴に怒られるわ」
「順子さんには未だに頭が上がらないみたいね」
苦笑いをして帰ろうとした圭吾が何か思い出したように立ち止った
「あ!沙希」
「なに?」
「随分昔の話になるけど・・・お前がhaluluを辞めた後
高校2年くらいの男の子がお前の事必死に聞いてきたんだ。
相当沙希の事好きだったんだろうな・・・絶対に見つけるって
オーラががんがんだったけど・・・」
最初は何を言ってるのかわからなかったが
すぐにそれがハルだと気づいた。
告白の返事もあやふやなまま姿を消したことを怒っていたんだろうなー。
あのころ彼は高校生だったし、私の事はちょっとした憧れの様に思えたのだろうと深く考えないようにしていたが
私がいなくなってからまさか圭吾と会ったとは思いもしなかった。
圭吾はあの時1回あっただけと言って帰って行った。
ハル・・・今の私を見たらなんて言うだろう
馬鹿な女と思うだろうか・・・
きっともう会うことはないであろうハルの事を久しぶりに
思いだし、私は久しぶりに胸がきゅんとなった。
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