きっともう大丈夫

再会2



それにしても変るもんだな~
私が知ってるハルは当時高校生だった。
それがどうよ。
目の前の彼は細身の濃いグレーのスーツにビジネスバッグ・・・・
見た感じ営業マンだ。
顔は、あの頃の面影はあるものの大人の男の顔に成長していた。
目元は少したれ目で幼い感じはするものの、
鼻筋は通っており唇は薄く口角は気持ちあがっている。
かなり男前になった。
間違いなくもてる顔だ。
9年でこんなにも人は変わるものかと感心しながら出た言葉が
「立派になったね~~」
再会の言葉がまさかのお隣のおばちゃん発言だ。
あちゃ~~っと思ったがすでに遅く、ハルは肩を震わせて笑いを堪えている。
「沙希さんは変わってないな。・・・・・くっ・・くく・・・うれしいよ・・・・くく・・・く。ほんとに」
「・・・・それって誉められてんのかしら?」
「もちろん誉めてるよ。でも本当に会えて俺めっちゃ興奮してるんだよ!」
とてもそう見えない
「あれ?嘘だと思ってるでしょ~~」
「さあ~~」
何だかからかわれてる様な感じがしてついついそっけない態度をとってしまった。
すると彼はスーツの内ポケットから名刺を取り出しボールペンで走り書きをし
私に差し出した。
「沙希さんにすごく会いたかったんだ本当だよ。話したいことや
聞きたいことが9年分あるんだ。ここで立ち話しても時間がたりないくらい。
でも俺今から仕事なんでゆっくりできないんだ。
だから電話でもメールでも構わないから必ず連絡がほしい。」
もらった名刺には
株式会社光岡商事、営業1部主任と書かれており裏には
携帯の番号とメルアドが手書きで書かれていた。
「すごい!大手じゃん。しかもその年でもう主任!すごいね。・・・・」
「・・・・・早く大人になりたくて頑張ったから・・・」
独り言の様に言った言葉は沙希の耳には入らなかった。
「沙希さんとにかく連絡ください。絶対だからね」
といって駅のほうに向かって走って行った。
9年か・・・ハルに自慢できるような事なんて何もなかった。
沙希はハルの後ろ姿を見ながら深いため息をついた。
 
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