きっともう大丈夫
俺の担当、営業1部は海外の食品の輸入、卸売をメインに行っている。
その中で俺は海外の有名紅茶の仕入れ、卸売販売担当をしている。
先ほどの丸商デパートとは長い付き合いで今日も営業のため2時に商談の予定だったのだが先方の都合で時間が変更になった。

予定よりも1時間遅くなったため
溜まった仕事を片付け、遅い昼食をとるとそのまま丸商デパートへ
向かうため会社をでた。
会社を一歩出ると心地よい風が吹き、何だか俄然やる気が出てくる。
俺って単純?
でも何でか今日は商談がうまくいきそうなそんな予感がしてた。
もちろん根拠は全くない。俺の勘?


丸商デパートは会社から徒歩約10分の所にあり
駅に隣接した老舗デパートだ。
デパートの周りには人気ブランド店やショップ、カフェなど様々な
店が軒を連ねている。
時間があった俺はウインドーショッピングしながら呑気に歩いていた。

歩いていると他の店よりもはるかに大きな白い建物があった。
今までこの道を何度も歩いてきたが気にしたこともなかった
ところがどうだろう。今日はなぜかこの建物がやたら気になった。
・・・・・どうやらここは結婚式場らしい。
俺にはまだまだ縁のないところと思いながら通り過ぎようとした
その時だった。
その結婚式場から誰かがやって来た。
いつもなら人が来ようが気にもしないのに、どうしてか今日に限って気になり、何気にその人の顔を見た途端俺の心臓が跳ねた。
嘘だろ?・・おい!嘘だろ・・・まさか
心臓が飛び出るんじゃないかと思うほどバクバクしてる。
どうしよう。
直ぐ近くに会いたくて会いたくてたまらなかった人がいる。

今までどれだけこの日を待ち焦がれたか。
もう二度と会うことはないと思ってた人と再会した時、どうしたんだらいいんだ?あまりの衝撃に思考回路が止まってしまった。
でもこのままただ驚いているだけじゃ、それでおしまいだ。
しっかりしろよハル!俺はこの日のために生きてきたようなもんだろう。
自分自身を叱咤する。
そして彼女との距離が少しづつ近づく。
彼女は俺の事を憶えているだろうか、もし声をかけてもわかってもらえなかったら俺はどうしたらいいんだ。
頭の中でいろんな思いがぐるぐる回る。
そしてまた1歩、彼女との距離が近づくが今ここで声をかけなければ
すれ違っておしまいだ。
俺は大きく深呼吸をした。
今だ!
「沙希さん・・・・だよね」
9年ぶりに会ったその人は俺が生まれて初めて本気で恋をした
沙希さんだった。
もう絶対に逃さないよ。
9年前の様な別れ方は俺がさせない。
子どもだなんて言わせないからな。

沙希さん・・・覚悟してよね。
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