きっともう大丈夫
『沙希さん・・』
「何?」
『もしかして・・・隣に誰かいるの?』
げ!しまった私と詩織は一瞬で固まった。
頭が切れる男はちがうね~~って感心してる場合じゃない。
詩織は私のスマホを奪うと意を決してハルに話しかけた。
「はじめまして、沙希の親友の渡辺って言います。」
『はじめまして、前野春斗です。』
「ごめんなさいね~沙希の事が心配で・・・」
『ハハハ、大丈夫ですよ。逆にこっちとしては好都合かな』
好都合?!
『渡辺さんは、俺と沙希さんのこと聞いてますよね。』
「さっき、聞いたよ。」
『じゃあー話は早い。俺、沙希さんのこと全然諦めてないので今後ともよろしくお願いします』
え?ええええ?諦めてないって・・ええ?
「前野君、大丈夫よ!協力するする。沙希の事お願いね」
『まかせてください』
ちょっと何あんたたちタッグ組んでんのよ!
私の意見は?
『じゃーいつにしましょうか』
「前野君に合わせるよ。私こう見えても沙希の雇い主だから、休みなんて
どうとでもなる」
何気に凄い会話してない?それが雇い主のいう言葉なの?
『それは助かります。じゃあー今週の土曜日でもいいですか?』
「大丈夫よ。まかせなさい」
「ちょっと大丈夫って・・・そんなに簡単に決めないでよ。」
「沙希、あんたは黙ってなさい。前野君?」
『ハルでいいですよ。』
「じゃあ、ハル。お願いがあるの。
 彼女の話を聞いてあげて。そして彼女の支えになってあげてほしいの」
詩織・・・そんな・・・
『わかりました。』
そして土曜日の事をすこし話をして電話は切れた。
はーーーーーーっ。
何がどうなってるかわかんない。
「ねえ!詩織?」
「ハルっていい子じゃないのさー。ちょっと私ファンになったかも」
「じゃあ詩織が会えばいいじゃん」
何か2人で勝手に盛り上がって決められた感が強くっておもしろくない。
「あのね・・・なに拗ねてんだか知らないけど、私が話しに入らなければ
ぐだぐだだったつーの。ハルはそうなることを予測して私に話を振ったのよ。さすが光岡商事の若きエリートだよ。」
詩織のこの饒舌っぷりはビールのせい?
「彼・・・本気だよ。沙希は久しぶりの再会で戸惑いの方が大きいのかもしれないけど、彼はずっと沙希の事を探して、そして見つけた。・・・その想いってきっと相当なもんよ。今度は沙希がその想いに答えてあげなきゃ。」
「あげなきゃって言われても。・・・」
「とりあえずはここでぐちぐち悩んだって仕方がない。土曜日直接あって
話をしなさいよ。もしかしたら、こんな女だったんだ―って振られちゃうかもしれないしね。」
「詩織!」
「あれ?なに怒ってんの?」
詩織の挑発に振り回され、結局その日はお泊りとなった。
正直、再会するまでハルの事は忘れていた。
だからこの急な展開についていけない。
でも心のどこかでうれしい気持ちもある。
ここ数年恋愛から遠ざかっていたからなのか・・・
それとも私を待っていた人がいたからなのか
だから詩織には感謝の気持ちがあるのも事実・・
きっと私だったらここまでの約束を取りつけなかっただろうし・・
私は複雑な気持ちのまま眠りに就いた。
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