きっともう大丈夫

9年分のキス

どうして?・・・・どうして?・・・ハルは何でここを知っているの?
連れてこられた場所に私は、今日で2回目の驚きを隠せなかった。
1回目以上の驚きだった。
そこは、明良との思い出のあの公園だった。
空は茜色に染まり、丘の上から下を見下ろすと
ぽつぽつと明かりが灯りだしていた。
私は驚きを隠せないままハルに問いかけていた。
「ここ・・・どうして・・・ハルが知ってるの?」
ハルにはこの場所が沙希にとって、とても大事な場所だということが
わかっていたようだった。
「詩織さんが・・・」
「詩織がなに?」
私の声は完全に上ずっていた。
「沙希さんの話を聞いてやってほしいって・・・ここの場所を教えてもらった」
「詩織が?」
「沙希さんの過去を知っている場所だから・・・」
私と明良の思い出の場所。
明良と別れてから1度もここへは来ていない。
ここに来ることで明良への思いが溢れることを恐れていたからだった。
詩織はそんな私の思いを知って・・・・
でもまさか、こんな形で再びここに来るとは思いもしなかった。
私は何にドキドキしているのだろう・・・・
明良の事を思い出して胸が熱くなった・・・・訳ではない。
私の中ではもう明良の事は終わっていた。
じゃあ・・私は・・・
真剣なまなざしで私を見てるハルと目が合い、
このドキドキの理由がはっきりとわかった。
私はこれから、ハルに明良との事を話さなくてはいけない。
私の過去を知って彼にもし幻滅されたら・・・
9年間、私の事を思ってくれていたのに私の過去を知って
ハルは私の事をどう思うのか、それが怖くてドキドキしていることに
気づいた。
私は9年たってもまたこの人を裏切るの?
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