きっともう大丈夫
でもいつかは話さなくてはいけない。
嫌われるんだったら傷が浅いうちがいい・・・よね。
それにハルはまだ若い、これだけのイケメンなんだから
直ぐ、素敵な彼女ができるだろう。
こんなおばさんとはさっさとさよならが一番よ。

「ハル・・・・」
ハルは私の隣に腰掛け薄暗くなってゆく景色を見つめていた。
「実はね・・・私・・・その・・バツイチなの」
なんか教会で懺悔でもしてるような気分だ。
ハルは私の言葉に振り向き・・・驚き・・・そして大きくため息をついた。
どのくらいの沈黙だろう・・・長くはないがとても長く感じた
「・・・・かもな・・・って思ってた」
ハルから意外な返事がかえって来た。
「え?」
また突拍子もない声が出てしまい慌てて下を向いた。
「沙希さん、あんまり自分の事わかってないようだけど綺麗です。
こんな人が35歳で独身なんて思ってもいなかった。
きっと結婚して子供がいるって・・・本当はそう思った・・・・」
「本来ならその予定だったんだけどね~~」
気持ちに区切りがついてるから言えるんだと改めて思った。
「ちなみに・・・いつ結婚したの?」
「ん~~30の時かな・・・」
「ちぇっ、その時俺21かよ・・・」
凄く悔しそうに言うハルがかわいく思えた。
「・・・・・haluluを辞めた後、花屋で働くことになったんだけど、その時の先輩が鈴木明良・・・私の元旦那さん。」
「・・・・じゃあ・・・鈴木沙希さんだったんだね。」
懐かしい響きだった。
短い間だったけど私はたしかに鈴木沙希だった。
「そう~鈴木沙希だったね。」
「・・・・・・何で別れたの?」
ハルが私の手を握り締めた。
「・・・明良・・・元旦那さんの浮気?・・・1回きりの浮気だったけど
それは許されるものじゃなかった」
少しだけ・・・思い出して胸がキュっと痛くなる。
思い出した時ちょっとだけ・・・・・ハルはさっきより強く握ってきた。
私はそれに答えるように少しだけ握り返した。
「・・・・1回きりでも許せなかった・・・それほど・・・旦那さんのこと好きだったの?」
ハルの目は真剣だった。嘘はつけないと思った。
「彼の事本当に好きだった。でもね・・・許せなかったのは・・・1回きりの浮気で
子どもが出来ちゃったのよ。」
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