きっともう大丈夫
ハルは無言で私を見つめる。
「情けないでしょ~。理性より欲望に負け、その結果がおめでた」
ハルはなんて返せばいいのか分からずにいた。
「・・・・子どもには何の罪もないしでょー。それが浮気でできちゃったとしても
・・・だから別れたの、子どもの父親になってもらうように・・・」
「沙希さん!」
「最初はね・・・本当に落ち込んだんだよ。だって好きだったから。でも・・・許せなかった。・・・・・幻滅したでしょ~。ごめんね・・・私・・・・ハルが思ってるような女じゃー!」
言葉の途中でハルが抱きしめてきた。
強く・・・・強く・・・
「ハ・・ハル?」
ハルは何も言わず私をただ抱きしめていた。
どのくらい抱きしめられていたのだろう
「あんた・・・馬鹿だよ」
抱きしめられていて顔が見えないけど怒ってるみたいだった。
「ハル」
「どんだけお人好しなんだよ。浮気されて・・しかも子どもができちまってんのに何、自分から身を引いちゃうんだよ。
子ども?たしかに出来ちまった子どもに罪はない!
だけど、なんで・・・なんでだよ・・・。好きだった旦那をそうも簡単に浮気相手に渡せるんだ?」
・・ハル・・違う・・・違うよ・・・私はそんな出来た女じゃない
「違うの!」
私の声にハルは抱きしめてた腕を離して私をみた。
ハルは怒っている様だった。
「違うのよ・・・ハル。あの人と浮気相手には愛情なんてなかった。さっき言ったでしょ。理性より欲望が勝ったって・・・・。私、彼の事好きだったけど許せなかった。だから私と離婚して浮気相手と子どもを育ててもらうことで
彼にその罪を背負ってもらったの・・・」
ハル・・・私はそういう女なの・・・幻滅してもいいよ。
ずっと好きだったって言ってくれて驚きもしたけどうれしかった。
でも私はあなたが思ってるような女じゃない。
私は立ち上がり、すっかり夜になった景色を眺めた。
「ハル。今日は凄く楽しかった。ありがとう~。こんなバツイチおばさんじゃなくってもっとかわいい女の子いっぱいいるんだから、私との事はこれで
The endにしようよ。」そういって振り向いた時だった
振り向いたすぐ後ろにはハルがいて、私の唇がハルの唇に触れていた。「・・・・ハル?」
「ムカつく・・・ムカつく・・・俺だったら絶対にそんなことしなかった。
もっと・・もっと早く沙希と再会してたら・・・
沙希を・・・泣かせるようなことしなかったのに・・・
俺じゃダメ?俺・・・沙希を絶対苦しめるようなことしないよ。
だって俺の方が沙希の事好きで好きで堪らないんだから
ぜってー泣かせない。そのための9年だったんだから・・・」
「ハル・・・・私・・・」
「ぜってー離してやんねーから。9年分の思いは誰にも負けねー」
ハル目は本気だった。
真っすぐでどんな私でも受け入れる覚悟ができている・・・そう思った。
「私バツイチだよ?」
「だからなに?」
「ハルより9歳も年上だよ」
「そんなのわかってる」
涙が勝手に溢れてハルの顔がぼやけてきた
「もう若くないから・・・結婚したいとか言っちゃうかもしれないんだよ。重いよ」
「俺は・・・結婚するつもりでいたけど?」
流れる涙をハルは手で拭ってくれる。
「でも・・・もう35歳で・・・子どもだってハルが欲しくても・・・・」
「じゃー早めに作ったっていいよ。俺すごいんだから・・・」
思わず二人で笑ってしまった。
「・・・沙希・・・愛してる・・・この言葉を言うのに9年もかかちゃったけど」
「ハル・・・・」
「沙希・・・愛してる・・・沙希は?」
私は黙って頷いた。
「俺のは9年分だからかなり愛情が濃いけどいい?」
「ハル・・・」
「でも・・・思いだけは誰にも負けないから・・・だから沙希・・・俺のものになって」
「ハル・・・」
自然に唇が重なった。
9年ぶりのキスは
今まで味わった事ないような愛情に満ち溢れていた
ハルが言ってた9年分は重いよ・・・はあながち嘘ではないようだった。
そして私とハルはこの公園での思い出に上書きをした。
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