BitteR SweeT StrawberrY
あたしは、一瞬、きょとんとしたけど、なんだか可笑しくなってくすくすと笑ってしまった。

「え~、なんでそんな顔するの?すごいじゃん!普通、そういう人に声なんかかけられないよ~?モデルさんとか、ケイならイケそうじゃない?」

「い、や、だ・・・っ!」

「なんで???カッコイイじゃん!」

「別に、そういう仕事したい訳じゃなかったからさ。
ガクに、試しにやってみろって言われて、少しだけ、やったこともあったけど・・・
やっぱ、あれはやりたい仕事じゃなかったな」

「え?何かの雑誌とかでモデルさんしてたの?」

「うん・・・・半年ぐらいだけど・・・随分と前の話しだよ」

「え!?何て雑誌???」

「ん?」

ケイは小さくため息をついて、どこか呆れたようにこう答えた。

「ガクに聞いて・・・」

あんまりにもやる気なさそうにケイがそう答えるから、あたしは、ついつい笑ってしまった。

「もぉ、なにそのやる気ない返事!」

「いや、やる気ないし」

そう言ったケイが、口元を軽く押さえて横を向き、また、けほっけほって咳をする。

「ん?大丈夫??」

「大丈夫。ここんとこ・・・なんか、時々、こんな咳が出る」

「風邪じゃない?」

「・・・・うん・・・だといいけど・・・」

ちょっとだけ含みのあるその言い方が、ちょっと不思議で、あたしはきょとんとしてしまう。
その時、ギャルソンさんが、オードブルのお皿を下げにきた。
同時に、なんか、あたしの後ろの席から、また、やたら元気な声が聞こえてくる。

「あ~すいませ~ん!シャンパンもう一本入れてくださ~い!」
ギャルソンさんは、とっても微妙な顔つきをして、引きつって笑うと「かしこまりました」と答えてキッチンの方へ歩いていった。
ケイの目が、また、ちらっと、あたしの後ろの席にいるカップルを見る。
あたしも思わず苦笑した。

「入れてくださいって・・・なんか、飲み屋さんみたい・・・」

「まぁ、普通、こういうとこでは言わないな。
もう一つ言うなら、シャンパンはガバガバ飲むもんじゃない。
コーラかよ・・・」

ケイは、呆れかえった様子で、もう一度ため息をついた。
あたしも、ケイの視線を追って、また、ちらっと後ろの席を見た。
すると、大輔によく似た背中のその人が、ジャケットのポッケから、綺麗にラッピングされた箱を取り出して、その女の子に渡しているとこだった。
その男の人が、何を話しているのか、さすがに、ちょっと聞こえない・・・
ただ、それを笑顔で受け取った女の子は、そそくさと箱を開けて、黄色い声でこう言った。

「うわっ!これ、チョコのお返しなん!?
うっは~~っ!ありがとぉぉ!FENDIだぁぁぁ!!」

流石にその声は大きすぎたのか、ギャルソンさんが、ささっと歩いてきて、その子に何か言ったみたいだった。
それを見てたケイが失笑する。
あたしはケイに向き直って、やっぱり苦笑するしかなかった。
そんなことをしてるうちに、ギャルソンさんが、スープをテーブルに運んできてくれる。
クリームグリーン色のスープ、アスパラの香りがほんのりいい匂いだった。

「あはっ、これもおいしそうだね?」

嬉しそうに笑ってしまったあたしをちらっとみて、ケイは、愉快そうに笑った。

「幼児か?」

「幼児じゃなくても、おいしそうなもの見たら喜ぶよぉ」

「じゃぁ、苺を見たらまたそんな顔するわけだ?デザート苺にしてくれって言ってみるか?」

冗談ぽくそう言うケイに、あたしは、えへへって笑って見せる。

「苺ならケイだって好きじゃない?ケイだって喜んじゃうでしょ?
っていうか、そんなこともできるの?」

「ためしに言ってみるか?」

「やだっ、いいよ、普通のデザートで!
あ・・・そういえばケイ・・・」

「ん?」

「この間・・・」

「この間、佐野さんとどこに行ったの?」って、無意識にそう聞きそうになって、あたしは、ハッと言葉を止めた。
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