BitteR SweeT StrawberrY
佐野さんがケイを見つめていた、あの優しい瞳・・・
うん・・・
あたしは、ちゃんと判ってるんだ・・
佐野さんはケイのことが、すごく好きだってこと・・・
別れても・・・
恋愛という関係が終わっていても、佐野さんの中では、きっと、ケイが一番で・・・
割り切ってるんだろうけど・・・
きっと、心のどこかでは、恋人に戻りたいって、絶対、そう思ってるんだと思う・・・
じゃあ、ケイは・・・
ケイは一体、どう思ってるんだろう・・・

それを考えると、あたしの心は、ものすごく乱れて、どんどんざわめいてくる。

「これは・・・ヤキモチ・・・なのかな・・・」

思わずそう呟いたとき、あたしは、ハッとした。

コートを・・・ケイの病室に忘れてきた!

「あぁ・・・どうしよぉ・・・」

あたしは、少しの間迷って・・・
まだエレベーターも来てないから、とりあえず、ケイの病室に、一度戻ろうって思って、通路を引き返すことにした。
夜の病院は静かだ。
ここは特別病棟だから、患者さんもほとんどいなくて、尚更静かだった。
あたしの足音だけが響く廊下。
あたしは色んな意味で不安になって、ケイの病室へと引き返した。
病室の前に立って。
何故かあたしは深呼吸する。
ここは、ノックしたほうがいいよねって、思って・・・あたしは、片手を上げてノックしようとした・・・
でも・・・

「少しは、気は変わったのかな?おまえ・・・」

ドアの向こうから、佐野さんの静かな声が、かすかに聞こえてきて、あたしは、思わず手を止めた。
いつも、こんなシチュエーションで立ち聞きしちゃうあたしは・・・嫌な性格なんだなって思う・・・
ノックすることも出来なくなって、あたしは、思わず、その場に立ち尽くしてしまった。
そんなことをしているうちに、今度は、やっぱりかすかにケイの声が聞こえてくる。

「気は変わってないよ・・・悪いけど。
ガクの世話にはなりたくない・・
ガクだから・・・なりたくない・・・」

「別に、今だって世話してるべ」

「世話の意味が違うだろ?
アタシもちゃんと仕事して、ガクもちゃんと仕事して、それなりのライフスタイルも出来上がってる。
あの時も、今と同じシチュエーションで、ガクはアタシに『嫁に来い』って言った」

あたしは、ケイのその言葉にハッとした。

ケイ・・・
佐野さんに、プロポーズされてたんだ・・・

急に心臓がばくばくしてしてきて、あたしは、物凄く不安になって、ぎゅうってハンドバックを胸に抱き締めてしまう。
ドアの向こうから聞こえるケイの声は、なんだか切なそうだった。
あたしがここにいることを知らないまま、ケイは、言葉を続ける。

「嫁になんかいけるかっていうの。
こんな体だよ?アタシは?
それに・・・もし嫁に行ったら、ガクはアタシに、どうせまた、仕事辞めろって言うだろ?」

「そりゃ言うべ・・・そんな体だからこそ、ゆっくりしとけって言ってんだから。
おまえが仕事辞めても、ちゃんと食わせて、病院通わせるぐらいできるからな。
要するに・・・おまえはもう、休んでくれって言ってんだよ。
どんだけ突っ走ってきた?おまえ?
三年前も・・・あの時も、俺は言ったじゃん?
おまえは走り過ぎだって・・・
なんでもかんでも自分でしょいこんで、それを平気な顔で一人で処理して、心だって体だって、へとへとになるべ?
あの時だって、今だって、おまえは俺に愚痴の一つも言わない、弱音も吐かない。
だから余計心配になるんだよ・・・」
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