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ケイは、唇でちょっとだけ笑って、穏やかな声でこう言った。

「今日、クレームつけてきた親子いたろ?」

「う、うん・・・」

「まさかあそこで、優子が出て行くとは、正直思ってなかったよ」

「えっ?」

「自己主張の下手なおまえが、クレームつけてきた客の前で、自己主張できない子の代弁するなんて。あれにはさすがに、少しびっくりした。
でも・・・」

「うん」

「おまえはもっと自己主張していいんだぞ。
こんなのは嫌だとか、自分はこっちのが好きだとか、そういうの、ちゃんと口に出すこと、もっと覚えた方がいい。
何も言えないまま後悔するぐらいなら、同じ後悔でも、はっきりもの言ってから後悔したほうがいい。ずるずる何かに引っ張られて、自分のやりたいこともできないような人生なんか、おまえだって・・・嫌だろ?」

「うん・・・そうだね」

あたしはこくんて頷いて、ちょっとだけ笑った。
ケイの言うとおりだと思う。
あたしは、今まで、ほんとに人に引きずられて生きてきた。
それが嫌だって思って・・・
違う世界見たいって思って・・・
あたしは、こうやって、ここにいるんだ・・・
ケイは、ゆっくりあたしに向き直ると、どこか切なそうに、でも穏やかに笑ってこう言った。

「死ぬまでに、どれぐらい自分の好きなことできるか、おまえも考えてみ?
死ぬ時に、これで思い残すことなんかないって思える人生のほうが、きっと幸せだと思う。
だからおまえは、おまえなりの目標見つけて、ちゃんと生きてけよ」

ケイは、まだ若いのに、なんでこんな、すぐ死んじゃうような言い方をしてるんだろう?
あたしは、純粋に不思議に思った。
だからあたしは、思わずこう言ってしまう。

「やだ、ケイ!
なんか、おじいちゃんかおばあちゃんの遺言みたいなこと言ってるよ?
どうしたの?」

ケイは可笑しそうに笑って、ふっと手を伸ばして、あたしのほっぺを優しく撫でる。
あたしはどきっとして、そんなケイから目を逸らすと、顔を赤くしてうつむいてしまった。

「な、なに?急に、どうしたの??」

「いや・・・おまえ、最近、ちょっと変わってきたなって思ってさ」

「変わった・・・かな?」

「相変わらず変なオーラは出てるけどな」

「もう!またそれ!?それ、今日、佐野さんにも言われたんだけど!」

「あははっ!そりゃ言われるだろ?だっておまえ、ほんと変なオーラ出てるし!」

「もぉ!ほんとにその言い方、ひどいと思う!」

「ひどいかな?」

「ひどいよぉ!」

そう言ったあたしを、ケイは愉快そうな顔つきで見つめて、頬杖を付いたまま言葉を続ける。

「ああ、そういえば、来週、おまえ、誕生日だよな?」

「え?あ、うん・・・ついに・・・26歳に・・・」

「26年間、変なオーラ出し続けてる訳だ?」

「ひっどぉ~~~い!!なにそれ!?」

「いや、ほんとのことだし!」

ケイは可笑しそうに笑って、そう言った。
あたしは、思わず膨れてしまったけど・・・
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