犬との童話な毎日

「気を付けてね」

手を振り返しながら、何か引っかかる物を感じた。
何か忘れている気がする。

公園の出口に向かうゆいちゃんの背中を見つめていると。

「あ……。ゆ、ゆいちゃああん」

急に思い出して変な声が出てしまった。

今の今までその存在を忘れていた黒曜を振り返る。

奴はブランコに腰を下ろしたまま、膝に両肘を乗っけて、あたしを見ていた。
前屈みのその姿勢は、前髪が目にかかっていて、妙に色気がある。

……なんなんだあの男は。
いや、化け犬は。

その目が、明らかに馬鹿、と言っている気がしたけれど。

「お姉ちゃんどうかした?赤ちゃんかまきり。やっぱり欲しかった?」
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