犬との童話な毎日
床から軽い身のこなしで、あたしの斜め前の前田君の机に飛び乗ると、のんびりとお座りをした。
もちろん前田君は、気付かない。
テストに解答を書き込む、自分の後ろ姿の肩の辺りから尻尾が時折、こんにちわをしている事も。
『字虫(あざむし)だ』
何処か楽しそうに、あたしと同じ空間を眺める。
む、虫?
え?
そもそも……これ…生きてるの?
そんな馬鹿な。
アザムシなんて、聞いた事も無いんだけど。
とは思っても、実際目の前で裏返ったり、角度を変えて空中を浮かぶ文字達は、確かに生きている様に見える。
さっきまでは平面の中に収まっていたとはとても思えない程。