人気女優がタイムスリップ!? ～芸能界⇒島原⇒新選組～

ザワ　ザワ　ザワ………


どこからともなく、活気あふれる商人の声や町娘の笑声が聞こえる中、私はある商店の前にいた。


「おじさーん、これとこれ。後、あっちのをくださーい!」


「はいよ!」


今は、夕餉（ゆうげ）に使う食材の買い出し中です。


「ふーっ。
一通り買う物は買い終わったかな。」


私は、意外としっかりしている乙葉ちゃんからもらった買い出しメモも再確認した。


そこに書いてある食材は全部買ってしまったので、あとはなるべく目立つように太く書いてある、“お酒”を残すだけとなった。


お花ちゃん曰く、このお酒は芹沢さんって人のものだから、忘れちゃいけないらしい。


ここで私が思ったことを一つ。


私が思う女中の仕事は、隊士の人達の身の回りのお世話。だからって、島原に行った隊士さんに付いて行って、酔いつぶれたから介抱をするわけじゃない。


こんなのただの理屈かもしれないけど、お酒好きな原田さんでも自分の分のお酒は自分で買いに行っている。


いくら、芹沢さんって人が偉いからって赤ちゃんじゃないんだし、そのくらいは自分でできると思う。


ここからは私の愚痴。


私達だって、約３０人ぐらいの隊士のお世話をしてるんだ!!


個人のお酒買いに行く暇なんかないんだよ!!


……こほんっ。


仕事への愚痴を漏らしてすっきりした私の目の前に、凄く貫禄のある古びた酒屋と思われる建物が見えてきた。


ここあいてるのかな??


そう思いつつも、久しぶりに重い荷物を持ってたくさんの距離を歩いた私は、この酒屋があいていることを願ってのその古びた木製の戸を開いた。


「お邪魔しま～す……」