風の詩ーー君に届け
10章/オルフェウスとガダニーニ
「ローレライについて?」


「ああ」



「何でまた急に……」



喫茶店モルダウ。

理久は安坂と向い合わせ、「ローレライ」について訊ねている。



「周桜に何か関係が?」



理久はゆっくりと息を吐く。



「動画でも確か『ローレライ』がどうのこうのと、周桜自身が言ってなかったか?」



安坂は言いながら、YOU TUBEの画像を開き、理久側に向けて再生する。



画像を見つめる理久の表情が、しだいに険しくなっていく。



「……あの莫迦」



捨て台詞のように呟く。



「どうした? 頼りないが凛々しい姿じゃないか」



「どこがだよ、……こんな辛そうな顔して」



「はあ、いつもと変わらな……」



「詩月は、こんな笑い方をしない」



< 200 / 372 >

この作品をシェア

pagetop