風の詩ーー君に届け
「届かないなら届くまで追ってこい。

追い付くまで諦めるな」



詩月は郁子の実力が、自分より劣っているとは思わない。



自分が今、Nフィルでプロと共演している分、分があるだけだ――。



Xceon(エクシオン)の旧マネージャーから言われた「早く進路を決めなさい」という言葉が、詩月の頭の中をぐるぐる回っている。



Nフィルとの契約は、あと数ヶ月で切れる。


留学の薦めも幾つかもらっている。


各所から演奏や共演、契約などのofferも来ている。



挑戦したいコンクールを考えれば、現状では厳しいことも詩月は、身に染みて承知している。



「届かないなら届くまで追ってこい」



郁子に言った自分自身の言葉が、木霊のように響く。



詩月は、決断の時かもしれないなと思う。




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