風の詩ーー君に届け
エピローグ
僕は搭乗手続きを済ませ、出発ロビーに立つ。


飛行機の翼が窓に映る。



「詩月、無理をするなよ」

「理久、大丈夫。病院ともちゃんと連絡をとっているし、師匠のお宅で1人暮らしではないから。大学も近いし」



理久は何度も心配顔で「無理をするな」と念を押す。



「周桜、しっかりな。
ウジェーヌ・イザイ、必ずファイナルを勝ち取れよ」



「安坂さん、もちろん」




「周桜、マスターからの伝言。
『俺の仇も取ってくれるよな」って……あの人は、ウジェーヌ・イザイに声楽部門で落選しているらしい」



「了解!」



安坂さんは、このあと学オケに戻って第九コンサートの練習らしい。



つい1週間前まで、ヴァイオリンと竪琴の二重奏をオーケストラ用に安坂さんやNフィルの如月さん、妹尾さん、マエストロと協力して編曲した。


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