嫉妬する男
「やっぱり、気になるよな?」
独り言のように呟くと、島田は淹れたばかりのブラック珈琲を俺のデスクに置いて見せた。
「まぁ、そりゃ気にならない方がおかしいだろうな。でも、今更だろ?篠崎ちゃんはそんな過去もひっくるめて、お前を選んだんだから」
俺の気も知らないで。
隣で悠々と、珈琲に口をつける姿を見ると、思わず溜め息が漏れ出す。
「だが、過去は消せない」
「お前、縛りすぎ」
そう言って、また一口、島田は珈琲を口に含んだ。
「そんなんじゃ、上野に篠崎ちゃんもってかれても文句は言えないよな?過去は過去だろ。美香の事、みるに耐えない程引きずっていたお前を、たちきってくれたのは誰だ?」
「言われなくても、わかっている」
「いや、どうかな。現に今も引きずっているだろ?過去の過ちを。上野は待ってはくれないぞ?お前が立ち直るのを」
島田は、残りの珈琲をグイッと飲みほすと、そっとデスクをあとにした。