HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
でも、その反芻するキモチは切なさと苦しさを与える。



「優奈ちゃんの言う通り…俺は猫を通して死んだ彼女を見ているんだ」



「吉良…さん」




「俺はまだ、彼女の死をリアルに受け止めるコトが出来ないんだ。彼女は二度と俺の腕の中に戻って来ないのに…」



吉良さんの青い瞳が潤んでいた。



ミャーミャーと吉良さんの腕の中に抱かれた仔猫が彼を慰めるように啼く。




「名前…まだ付けてなかったね…」




吉良さんは瞳に涙を止め、必死に笑って仔猫を見つめた。



その姿はとても痛々しいし、同情心が湧き上る。




私は吉良さんの瞳の零れそうな涙を指先で拭ってあげた。




「泣きたい時は泣いた方がいいよ。吉良さん」



「ありがとう…優奈ちゃん」



吉良さんは抱っこしていた仔猫を床に下ろして、私の右肩に手を置いた。そして、左肩に額を乗せ、静かに泣いた。



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