【完】本当の恋
新たな恋     谷川愛生
傷ついた恋を癒すのは新しい恋。
そんな事分かってる。
でも、忘れられない。
こんな気持ちになるなら好きにならなければよかった。
「愛生、大丈夫?」
「うん。ありがとう」
「よし。元気ない愛生に合コンセッティングしてあげる」
「え!いいって。桃子は吉沢くんがいるでしょ!」
「愛くんにセッティングしてもらうの!」
「そんな、悪いよ」
私は、まだ彼のこと忘れない。
「新しい人見つけて、二人で幸せになろうよ」
「う、うん」
断ることが出来なかった私。
心のどこかで忘れたい気持ちがあったのかな。
合コンは3対3で行われることになった。
「ねえ、あと一人誰にする?」
「え!どうしよう」
すると、白雪さんと目が合った。
「あ。白雪さん!」
「は、はい」
白雪塔子。
物静かでいつも本を読んでいる。
メガネをかけていて話しかけにくい存在。
「ちょっ。愛生、まぢで?」
「いいじゃん」
私は白雪さんの方に行く。
「あのさ、合コン行かない?」
「・・・」
「愛生。白雪さんはそんな人じゃ・・」
桃子が言いかけた時。
「行きます」
「ほらね。行くって・・・行くの!?」
「はい。私が行ってもいいのなら」
私は桃子にウィンクをする。
「じゃあ決まり!桃子、帰ろ」
「うん・・・」
合コンの日
「じゃあ、自己紹介から始めまーす」
吉沢くんが仕切りだす。
「俺は、吉沢愛斗。桃子の彼氏でーす」
吉沢くんは桃子に投げキッスをしてみせる。
「オレッチは江口良太郎っす。しくよろでーす」
隣のちゃらい人が挨拶する。
「あの、僕は加藤明です」
おどおどと挨拶をした。
「かっこいい」
隣を見ると白雪さんが小声で言った。
視線の先はちゃら男。
私と桃子は目を合わせる。
私たちも挨拶をして、2次会に行くことになった。
「カラオケ行く~っ」
ちゃら男が言うと白雪さんはキラキラと目を輝かせて行きたいと言った。
「俺の美声に惚れるなよ~」
「あのさ、ここからは自由ってことで」
吉沢くんが言うと桃子も賛成!ってことでバラバラに帰ることになった。
「あの、谷川さん」
加藤くんに声をかけられた。
「あ、はい」
「家まで、お送りします」
「あ、はい・・・」
私たちは無言のまま歩き始めた。
いつもの帰り道なのに遠く感じた。
やっとのことで家に着いた。
「あ、わざわざありがとうございました」
「いえ。では・・・」
家に入ろうとしたとき
「あの、ぼ、ぼくとつ、つ、」
「つ?」
「付き合ってもらえないでしょうか?」
「・・・」
《傷ついた恋を癒すのは新しい恋》
そんなの分かってる。
でも、このままでいいの?
彼のことこのまま忘れても・・・。
「谷川さん?」
「あの、ごめんなさい」
「どうしてですか」
「え?」
「どいつもこいつもなんでだよっ」
さっきまでおとなしかった彼が私の首を締め付ける。
「うっ」
「いつも振られて、顔か、面白くないからか」
「うっ・・」
意識が遠くなる。
「違っ」
やっとの思いで出た声もすぐかき消される。
「うるさい」
彼の力がさらに強くなる。
ダメだ。死ぬんだ私。
 ドッ
「おい、行くぞ」
フラフラになりながらも私は腕を引っ張られて走った。
「おい。大丈夫か!?」
助かったんだ。
私は気を失う。
目が覚めるとベッドで寝ていた。
知らない家。
「あ、起きたんだ。はい」
彼はココアをくれた。
「具合。良くなった?」
「あの、あなたは?」
「ああ。俺は精神科医の山口浩太。28歳の独身でーす」
名刺を渡された。
「あ、ありがとうございました。親が心配してると思うので帰ります」
私は、ベットから立ち上がり玄関に向かう。
ガシッ
「今帰ったらあの男いるかもしれないぞ」
「でも・・・」
「泊まってけ」
「え」
「親には電話でも知ればいいだろ」
「でも・・」
「大丈夫。手は出さねえし。こう見えて医者だから」
「・・・」
「疑ってんな。分かったよ。俺は、ソファーで寝るから」
なんでこんなに優しくしてくれるのだろう。
彼に似てる。
しゃべり方も、不器用なところも。
「じゃ、お休み」
浩太さんはリビングに向かった。
疲れていたせいかすぐに眠りについた。
どのくらい寝たのだろう。
気が付けば朝になっていた。
リビングに行くと、浩太さんの姿はなく、テーブルにこの家の鍵であろう物が手紙と一緒に置かれてあった。
おはよう
俺は、仕事に行ってくる。
この鍵は君が持っていていいから。
学校には休むと電話したよ。
冷蔵庫にごはん入ってるから温めて食べて。
ゆっくり休といいよ。
私は、冷蔵庫を開ける。
チャーハンが入っていた。
私は、温めて食べる。
「おいしっ」
私は、食べ終えて掃除をしたり洗濯したりした。
「よしっ」
とてもきれいになった部屋を見てうれしくなった。
ピロリン~
寝室にある携帯が鳴った。
《 谷川愛生
愛生。愛くんから聞いたよ。大丈夫?
ごめんね。私のせいで。
今どこ、会って謝りたい
野々上桃子》
私は返信をして会うことにした。
待ち合わせの公園。
私は5分前に着いた。
桃子の姿はない。
「愛生―っ」
声のほうを見ると、桃子ではなく加藤くんだった。
「え!」
「桃子ちゃんにお願いされたんだ。君にひどい目に合わせてって」
「そんな。どうして」
「君にうんざりしてたんだと。ほら、行くぞ」
私は、加藤くんに腕を引っ張られた。
「いや。離して!」
「愛生っ!」
「浩太さんっ」
偶然と通りかかった浩太さんが助けてくれた。
「ありがとうございました」
浩太さんは私の手を優しく握った。
浩太さんといると心が落ち着く。
恋したの私。


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