【完】本当の恋
家族問題 谷川愛生
【本日、東京都の高校で男子児童が逮捕されました。彼は、告白を断れた17歳の女子生徒の首を絞めたとして殺人未遂で逮捕されました。彼の両親は】
ピッ
「くだらないもの見ないで早く学校に行きなさい」
「おい。俺のネクタイ知らないか?」
「いま、持ってくるわ」
「お姉ちゃんおはよう」
「おはよう」
「香苗。弁当カバンに入れておくね」
「うん」
「愛生。早く行きなさい」
「はーい」
普通の家。
こんな会話どこも同じ。
でも、うちは違う。
妹は有名私立に合格、部活でも大会優勝を何度もしてる。
私は、いらない存在。
いつだって妹が一番なのだ。
「行ってきまーす」
もちろん返事なんてない。
《いってらっしゃい》
心の中で言ってみる。
お昼時間。
「愛生。屋上で食べよ」
「うん」
私はカバンの中から弁当を探す。
見つからない。
「あ、弁当忘れた」
「もう、じゃあ、食堂行こうか」
「うん。ごめんね」
「いいって」
妹の弁当は入れるくせに・・・。
「でね、愛くんたら、怒ったときの桃子怖いって」
「だって、怖いもん」
「愛生まで、ひどくない?」
「えへへ」
「あ、浩太さんとはどうなの?」
「うん。私が孝佑のこと忘れるまで待っててくれるって」
「なにそれ!愛生にべた惚れじゃん!」
「そうかな」
「羨ましいな。愛くん、好きって言ってくれないもん」
「へー。意外だね」
「キスとかエッチとかしかしてくれない」
「エッチしたの?」
「うん。あれ、言ってないっけ?」
「う、うん」
「てか、愛生顔赤いよ」
「だって、恥ずかしいこと言うから・・・」
「かわいいな。浩太さんとは?」
「な、何もないよ」
「え!浩太さんよく我慢できるね」
「我慢?」
「だって、こんなかわいい子、キスくらいしたくなるもんだって」
「かわいくなんてないよ」
たあいのない会話。
この会話がすごく幸せで、桃子といると落ち着く。
「そろそろ、教室戻ろうか」
「うん」
教室に戻ると教室が騒がしかった。
「何だろう」
教室に入ると彼がいた。
「愛生。久しぶり」
「・・孝佑」
「実は、親父の病気が悪化して、日本の病院に移動になった」
「矢神、いつ帰ってきたの?」
「3日前」
「・・で」
「え?」
「なんで今なの!」
私は教室を飛び出した。
「愛生っ」
行くところのない私。
携帯が何回も鳴る。
財布には500円玉が1枚。
「どうしよう」
財布の中に浩太さんの家の鍵が入っていた。
「浩太さん」
私は浩太さんの家に向かう。
ガチャ
「浩太さん?」
家の中には誰もいない。
私はベットに眠る。
浩太さんが帰ってくるまで眠っておこう。
何時間たっただろう目を覚ますと外は暗くなっていた。
時間は10じを回ろうとしていた。
ガチャ
「あ、帰ってきた」
私はびっくりさせたくてクローゼットに隠れた。
「あ、上がっていいよ」
「お邪魔すまーす」
《え?誰!》
浩太さんは女の人と帰ってきた。
《もしかして、彼女?》
2人はなんだか楽しそうでお似合いのカップルだ。
私って、遊ばれてたの。
「ううっ」
つい声を出してしまった。
「ねえ、誰かいるの?」
「え?どうして?」
「声が聞こえたから」
「ああ、じゃあ見てくるからここで待ってて」
浩太さんが近づいてくる。
バッ
「愛生っ!」
「ごめんなさい。お邪魔だったよね。ごめんね帰るから」
「おい。待てよ」
私は浩太さんの家を出た。
「愛生っ」
私は浩太さんに掴まれた。
「泣いてるのか?」
「泣いてなんかっ。ない」
「勘違いしてないか。あの人は、俺の患者だよ」
「患者なら、病院で相談を受ければいいじゃないっ!」
「あの子は特別な子なんだ」
「私は特別じゃないのね」
「そんなこと言ってるんじゃ」
「もういいから。実は今日、彼がアメリカから帰ってきたの」
「えっ!」
「彼とやり直すから」
「ちょ、まてよ」
「私は浩太さんにとって遊びなんでしょ」
「違う」
「もういいっ。これ、返すね。じゃ」
私は浩太さんの家の鍵を返して帰った。
「愛生っ」
ガチャ
「ただいま」
「・・・」
「はぁ」
リビングに向かうとお父さんとお母さんが何か話していた。
「おい。離婚したいってどういうことだ」
「もう限界なの。愛生のこと」
「何言ってんだ」
「あの子、本当の子じゃないのよ」
「だからなんだ」
「私にはあの子に愛情を注げない」
「俺だって、あいつを引き取るなんて」
《えっ。私が実の子じゃない?》
「お父さん、お母さん。どういうこと」
「愛生っ」
「お父さん説明して」
「お前は俺たちの子じゃない」
「どういうこと」
「愛生。あなたはお母さんの妹の子なの」
「えっ」
「あなたのお母さん里奈は育児放棄したの。だから、私たちが育てることにしたの」
「母さんッ」
「いいの。言わなきゃ分からないから」
「ちゃんと聞いて!」
お母さんは話してくれた。
本当のお母さんのこと。
私のお母さん上村里奈は18歳の時に私を生んだ。
相手の男は逃げたらしい。
母は私を女手一つで育ててくれたらしい。
でも、初めての育児で困りはて、相談できる相手がいなくて結局育児放棄に鳴ったらしい。
それから半年たち私が1歳になったとき、母は私を置いて逃げたらしい。
どこいるかは分からないと。
「今まで、隠していてごめんなさい」
「すまない」
「里奈のこと責めたりしないで」
「・・・出ていく」
「え?」
「こんな家出ていくって言ってんの」
私は家を飛び出した。
< 15 / 19 >

この作品をシェア

pagetop