【完】本当の恋
真実 谷川愛生
行くところがない私は公園に行った。
「愛生?」
そこには孝佑がいた。
「あれ。家、ここらへんなの?」
「ああ。近くのマンションに越した」
「そうなんだ」
「うん。なんかあった?」
「え!」
「いや。こんな時間に珍しいなって」
「ああ。ケンカしちゃった」
「そっか。あのさ、俺んちくる?」
「いいの?」
「愛生なら母さんも歓迎するだろうし」
「ありがとう」
私たちは孝佑の家に向かう。
「入って」
「ありがとう」
「愛生ちゃん。久しぶり覚えてる?」
「あ、はい」
「大きくなって。かわいいわね」
「ありがとうございます」
「孝佑とは付き合ってるの?」
「母さんっ!」
「何よ。照れちゃって。好きなくせに」
「いいから寝ろよ」
「はいはい。お邪魔だったよね」
孝佑のお母さんは寝室に行った。
「ごめん。変なこと言って」
「ううん。大丈夫」
「ここが俺の部屋」
「ああ。ありがとう」
「ベット使えよ。俺は床で寝るから」
「あ、いいよ。私が床で」
「いいって。お休み」
「ありがとう。お休み」
私はなかなか眠れなかった。
「愛生?寝れない?」
「ごめん。起こしちゃった?」
「ううん。俺も寝れない」
「あのさ、彼女とはどうなの?」
「ああ。わ、別れた」
「そうなんだ」
「そっちは、彼氏できた?」
「彼氏だと思っていた人いた。でも、遊ばれてた」
「・・・ごめん」
「なんで謝るの?」
「つらいこと思い出させて」
「いいよ。もう吹っ切れたし」
「あのさ、俺と付き合わないか?」
「え?」
「俺、愛生のこと好きだ。もう傷つけたりしない」
「・・・ごめん。今は答えられない」
「そっか、だよな。ごめん」
私は、いつの間にか寝ていた。
「愛生。学校遅刻すんぞ」
「え。もう時間」
「俺、先に行くから」
「うん。いってらっしゃい」
「行ってきます」
私も準備をして学校に向かう。
今日1日、あっという間で、放課後になった。
正門の方で女子たちが騒いでいた。
その中心にいたのは浩太さんだった。
「あ、愛生」
浩太さんは私のほうへ駆け寄る。
「この前のことで話したいことがあって」
「別に、いいから」
「彼女とはなんもないよ。それに、愛生に聞きたいことがある」
「なに?」
「俺の家に行こう」
私は浩太さんの車に乗る。
浩太さんの匂い。
この匂い好きなんだよな。
家に着き、入ると、この前の女の人がいた。
「紹介するよ。彼女は、2か月前に病院に通っている、上村里奈さんだ」
「ウエムラ、リナ」
その名前は、お母さんの名前だった。
「愛生。分かるか?」
「・・・お母さん?」
「愛生っ。ごめんなさい」
里奈さんは泣いて謝った。
「上村さんは、愛生を捨てたんじゃない。預けたんだ」
「えっ」
里奈さんは、ゆっくり話してくれた。
「私がまだ高校3年生の時、付き合っていた彼との子供を授かった。それがあなた、愛生なの。私たちは話し合って産むことにした。でも、彼の両親が許してくれなかった。私たちは駆け落ちしたの。1年くらいしてからね、彼、病気にかかったの、元々体が弱くて、無理したせいで。それで、亡くなったわ。このことが彼の両親の耳に入って、私のところに訪ねてきた、100万円渡されて、愛生を引き取りたいと言ってきた。もちろん断った、でも、しばらくして私一人で育てられなぬなって、お姉ちゃんにあなたを預けたの。私が、立派になって愛生を育てられるようになるまでの間。ごめんね。迎えに来るの遅くなって。ううっ。ごめんねっ。ごめんなさい」
私は、何ていえばいいか分からなくてしばらく黙った。
「愛生。これが真実だ」
「・・・私は・・許さない」
「え!」
「あなたが、大変だとか、辛かったとか。そんなの、許せない」
「愛生。上村さんは1人で悩んでいたんだぞ」
「浩太さんには分からないよ。どんな思いであの家にいたか!」
泣きたくないのに、涙が溢れ出る。
「私は、あの家に、必要とされてなくて、私だけ、いないものみたいに扱われて!その気持ちあなたには分かりますかっ!」
「うう。ごめんなさい」
「謝らないでください。私、あなたが嫌いです」
私は浩太さんの家を出た。
近くの公園で泣いた。
「愛生っ」
「浩太さんっ」
浩太さんは私を優しく抱きしめた。
「浩太さん。私、許せないよ」
「うん」
「私、どうやって、許せばいいの」
「愛生。何も考えるな。許せなくても、許したいと思うことが大切だ」
「ううっ」
「俺が、ついてるから」
「うん。ありがとう」
私と、浩太さんと、里奈さんは私の家に向かった。
「ただいま」
「愛生っ」
部屋からお父さんとお母さんが出てきた。
「里奈!?どうして」
「お話は、中で話しませんか」
「あなたは?」
「精神科医の山口です」
「どうぞ中に」
私たちはリビングで話した。
里奈さんはお父さんとお母さんに話した。
「里奈。それで、愛生を引き取りにきたの?」
「ええ。今、会社を立ち上げて頑張っているわ」
「母さん。いいんじゃないか」
「・・・」
「お姉ちゃんには感謝してる。でも、これからは、愛生と2人で過ごしたい」
「いや。愛生は渡さない」
「母さんっ」
「愛生は、私の子よ。なんで帰さなきゃいけないの?」
お母さんは私を抱きしめた。
「お母さん・・・」
「里奈ちゃん。僕も反対だ。愛生は渡せない」
「お義兄さんまで」
「里奈さん。私、里奈さんのこと許せません」
「愛生!?」
「里奈さんには感謝してます」
「愛生。どうして」
「私の家は、ここだから」
「そっ。でも、いつでも、遊びに来ていいからね」
「浩太さん。家まで送ります」
浩太さんと里奈さんは家を出た。
「愛生。ごめんね」
「お母さんと話して愛生には厳しく育てようって」
「え!」
「愛生には辛い思いをさせた」
「愛生。パパとママは愛生に立派に育ってほしくて。ううっ」
お父さんとお母さんは私を抱きしめた。
私は、この家が大好きだ。




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