【完】本当の恋
復讐     谷川愛生
「そろそろテストだー」
桃子が私の部屋で叫ぶ。
今日は、私の家で勉強会をしている。
「次のテストで赤点だったら夏休みも学校だよー」
桃子は机に顔を付け愚痴を言う。
「夏休み愛くんに会えないなんていやっ!」
顔を上げて勉強を始める。
 カチッ カチッ カチッ
2時間後
「「終わったー!」」
「愛生、ありがとう。これでテストは大丈夫!」
「お互い頑張ろうね」
「うん。夏休みは愛くんといっぱい遊ぶっ」
「うん」
私は駅まで桃子を送る。
「ありがとう愛生。じゃあ明日」
「うん。気をつけて帰ってね」
「うん。ありがとう」
桃子を送った後家に帰る。
 コツッ コツッ コツッ
誰かが私をつけている。
私は怖くなり早足で帰る。
足音も早くなる。
『どうしよう。孝佑。助けて』
孝佑のマンションの前を通ると偶然にも孝佑がいた。
「孝佑っ!」
私は孝佑のもとへ走る。
「愛生!?」
 ガシッ
「愛生。こんな時間にどうした?」
「あのね・・・」
私は震えて話せない。
「とりあえず家に入れ」
孝佑は家に上げてくれた。
「適当に座ってて」
私はソファーに座る。
「オレンジジュース入れるから」
「え!」
「愛生好きだろ。オレンジジュース」
「うん」
孝佑はオレンジジュースが好きなことを覚えていた。
私は入れてくれたオレンジジュースを飲む。
「落ち着いたか?」
「うん。ありがとう」
「何があった?」
私はさっきあった話をする。
「相手の顔見たか?」
私は首を横に振る。
「そっか。ごめん」
孝佑は私を抱き締める。
あの時と同じ温かい孝佑の匂い。
「俺、愛生のこと守るって言ったのに」
「孝佑が謝らないでいいよ」
孝佑は強く抱きしめる。
孝佑は家まで送ってくれた。
「ありがとう」
「もう大丈夫だな」
「うん」
「遅い時間に家出るな!」
「うん。気を付ける」
「お休み」
あの日から3日が経った。
それ以来何も起こってない。
「愛生ー。おつかいお願いっ」
私はお母さんに頼まれてスーパーに行く。
「うん。行ってくる」
買い物を終えてまた誰かにつけられている。
『嘘。どうしよう』
私はチラリと振り返る。
『え!嘘』
つけていたのはこの前の痴漢の人だった。
その日から時々見かけるようになった。
しかもいつもつけられる。
誰にも相談できないまま2週間が経った。
「愛生!?」
「え!ごめん。何?」
「ぼーっとしちゃって。愛くんとのお泊りデートの話」
「ああ。そうだね。ここは?」
「ここか。いいかも」
桃子はパンフレットを見ながらニヤニヤしている。
「愛生は矢神とどっか行くの?」
私は桃子の声なんて聞こえてなくて。
「愛生!!」
「え?」
「どうしたの?最近元気ないよ」
「そんな事ないよ」
「矢神とうまくいってないの?」
「ううん。超ラブラブ」
「じゃあなに?」
「何でもないよ」
「ほんとに?」
「本当だって」
私はいつものように孝佑と帰る。
「でさ、愛斗の奴バカでさ。愛生?聞いてる?」
「あ、うん。聞いてる」
「あのさ。まだつきまとわれてるよね」
「え!」
「さっきから誰かがついてきてる」
孝佑は振り返る。
「おい。誰だよ。出て来いよ」
「孝佑!」
すると、男の人が出てきた。
「誰だてめえ」
「お、俺の、俺の人生返せっーーー」
男は私めがけて走ってくる。
手には包丁。
「愛生っ」
 グサッ
「う、うわーーー」
「「きゃーー」」
目の前には孝佑の背中。
 バタン
孝佑が倒れる。
お腹には包丁が刺さっている。
「孝佑・・・。孝佑ーーっ」
 ピーポー ピーポー ピーポー
手術中のランプが光る。
男は痴漢した後会社をクビになり奥さんに逃げられて人生がめちゃくちゃになったという。
そのことを怨み私のことを殺そうとしたらしい。
「孝ちゃんっ」
しばらくしてお姉さんが来る。
「孝ちゃんは?」
「手術中です」
2時間後
手術中のランプが消えた。
お医者さんが出てくる。
「孝ちゃんは!?」
「安心して下さい。寝ているだけです」
「良かった。ありがとうございました」
お姉さんは泣きながら何度も頭を下げていた。
「愛生ちゃん。孝ちゃんと距離を置いてほしいの」
「えっ!」
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