【完】本当の恋
届かぬ想い     谷川愛生
事件から1週間。
孝佑の病室には刑事さんが来て事情聴取をされた。
今回の事件は相手の逮捕で解決した。
「孝佑。ごめんね」
「いいって」
「私が、私が刺されれば良かったのに」
「なに言ってんだよ。こんな傷かすり傷と同じだよ」
『お姉さんに言われたこと言わないと』
「孝佑。あのね・・・」
 ガラガラッ
「矢神さん。診察の時間です」
「あ、はい。愛生。後で」
「うん」
孝佑は看護師さんと行ってしまった。
私は病室を出る。
『孝佑。ごめんね。私、孝佑の彼女になれないよ』
「うっ・・グズッ」
家まで遠く感じた。
孝佑とならもっと早く着くのに。
「エーン。エーン」
家に途中泣いている女の子を見かけた。
私は、その子に近づく。
「おい」
「雄一くん!」
「泣くなよ。ほい」
男の子は女の子のことをおんぶした。
「ありがとう」
男の子の顔が赤くなる。
私はあの時のことを思い出す。
孝佑。文句言いながら私のこと優しくしてくれて。
「あれ、なんでだろう」
私の頬には涙が流れていた。
「あはは。バカみたい」
孝佑のこと思えば思うほど涙が止まらない。
すると、女の子が近づいてきた。
「お姉ちゃん。貸してあげる」
女の子は私にハンカチをくれた。
「ありがとう」
「うん」
そう言って女の子は男の子のところに行ってしまった。
「あ、ハンカチ」
私は、ピンクのかわいいハンカチで涙を拭きとる。
「愛生!!」
家の前には桃子が来ていた。
私は、1週間学校を休んでいた。
 パンッ
物凄い音と同時に頬がジンジン痛い。
そして、桃子は私を強く抱きしめる。
「愛生のバカ。何で相談しないの!?私たち親友でしょ」
「うっ・・桃子っ」
「愛生・・・」
私たちは大声で泣いた。
生まれたばかりの赤ちゃんのように。
桃子に距離を置く話をした。
「なんで。お姉さんに反対されたぐらいで」
「でも、私のせいで孝佑がっ・・・」
「愛生。本当にそれでいいの?」
「うん・・」
「そっ。愛生がそう決めたなら私は何も言わない」
「桃子っ」
「愛生。私は何しても愛生と友達は止めない。愛生のこと信じてるから。愛生は?」
「私だって」
「だったらもっと孝佑くんとのこと考えな」
桃子はそう言って帰って行った。
「信じるかっ・・・」
次の日、病院に行ってみる。
でも、孝佑はすでに退院していた。
「あの。矢神さんは?」
「ああ。彼なら昨日お姉さんと退院しましたよ」
私は孝佑に電話する。
《おかけになった電話番号は電話に出ることが出来ません。
ピーッとなりましたら。留守番電話になります。》
 ピーッ
「孝佑。今どこ?会いたい。留守電聞いたら電話して。じゃ」
私は電話を切る。
 プルルッ プルルッ
「もしもし。孝佑?」
『ごめん。しばらく会えない』
「どうして?」
『今。姉貴の家にいる』
「いつ帰ってくるの?」
『分からない。ごめん』
「あのね。夏休みさ桃子たちと一緒に海行かない?」
『愛生。俺たちしばらく距離置かないか?』
「えっ?」
『俺、少し考えたい。俺たちのこと』
「じゃあ、一緒に考えようよ」
『一人にしろって言ってんだろっ!!』
孝佑の怒鳴り声。
「そっか。分かった。じゃあ」
『愛生。俺は、』
 プチッ
 プーッ プーッ
孝佑のこと好きなのに大好きなのに何で?
神様ひどいよ。
こんなことなら会いたくなかった。 





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