獣耳彼氏



時間になり準備運動、柔軟、組手と部活が始まった。



「お疲れ様でした」



部活が終わり掃除をする。


京子はさっさと自分の持ち場の掃除を終わらせると用事があるからと帰ってしまった。


他の部員も次々と帰って行く中、私はゆっくりとした手付きで掃除をしていた。


だって、また明日って言ってくれたから、もしかしたら秋月くんが待ってるかもしれない。


そう思うと、中々直ぐに帰り出すことが出来なくて。


自分の心を落ち着けるために無心で掃除をしていた。その時だった。



「あの、さ」



残っているのは私一人だと思っていた道場の中に声が響く。


その声に振り返ると部長が後ろに立っていた。


一定の距離を取って立つ部長に既視感を覚える。


しゃがんでいた所を立ち上がると部長が俯く。


やはり既視感の強いこの光景。


告白された時と同じだ。



「な、なんですか…部長…」



告白ではないだろうと、問い掛ける。


もしかしたら、昨日のことで何か覚えているのかもしれない。


それで話しかけてきたのだろう、きっと。



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