風神さん。


「じゃあさ、僕とコンビを組もうよ!」

男の子は、なるべく笑顔でそう言った。自身の笑顔で、このカンナヅキの涙と震えが止まるとは思えないけれど。少しでもかき消せるなら、と。

「コンビ」とは。
主に、魔導師ギルドなどで見られるチームを作ること。
二人のチームならば、コンビ、三人ならばトリオ、四人以上ならチームと呼ばれる。
目的は、1人では難易度の高いクエストを複数人で挑み、リスクを減らすというもの。
実際にここ、「天使の誘惑」<ハニーエンジェル>でも、複数のコンビやチームが存在している。
ネリーとレーヌが組む双子の息がピッタリなコンビや、ラナーとトゥーヴァの組むコンビなど。

そんなコンビを組もう、と男の子はカンナヅキを誘った。

「お姉さん1人じゃその「風神さん」は探せないでしょ?…僕も、なんていうのかな、同じ異名で呼ばれるその人に興味が湧いたっていうか……僕の記憶を探すのもついでに。二人で、探そう⁇」

男の子はカンナヅキの両手をしっかりと握り、カンナヅキが言葉を漏らす暇も与えなかった。

「ほら、さっき依頼もとっておいたしね」

カンナヅキはNOの返事が出せるわけがない。
しかし、「独り」ではないという安堵からか、カンナヅキの涙は止まり、笑顔がこぼれていた。

「うん」

カンナヅキは、首を縦にふった。



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