終わらない
エスカレート 菅保麻衣子
茉奈に荒木くんとのことがばれた。
その日から、私はいじめられた。
でも、荒木くんが茉奈と別れて付き合ってくれるまでの我慢。
そう思って辛いことも耐えた。
なのに、荒木くんは茉奈と全然別れない。
メールをしても返事がない。
辛い。苦しい。
凜だけは助けてくれるって信じてた。
なのに、凜は私を裏切った。
でも、万引きしようとした私を止めてくれた。
凜。あなたは私の味方なの?敵なの?
信じてもいいの?
私は日記をつけることにした。
もし、自分の身に何か起こったらこの日記を見せてみんなに復讐する。
次の日、茉奈に財布を盗めと命令された。
私は仕方なく引き受けた。
でも、やっぱり怖くなって出来なかった。
帰りのホームルームで茉奈が財布がないと騒ぎ始めた。
茉奈は私の鞄をひっくり返し、中から自分の財布を取りだした。
放課後、職員室に呼ばれた。
「菅保さん。どうして天壌さんの財布を取ったりしたの?」
「私じゃありません」
「でもね、あなたの鞄から出てきたのよ?」
「ほんとに知らないんです!」
ガラガラッ
「麻衣子っ」
入ってきたのはお母さんだった。
「本当にすいませんでした」
「お母さん。まだ菅保さんがやったって決まったわけじゃ」
「でも、この子の鞄から出てきたんですよね?」
「それは・・・」
「麻衣子っ!どうして嘘つくの!茉奈ちゃんに謝りなさい!」
「・・・」
「麻衣子っ!」
「お母さん。落ち着いてください」
「おばさん。私、許します麻衣子のこと。だって友達ですから」
「茉奈ちゃん・・・」
友達。
茉奈の言葉が頭の中をぐるぐる回る。
「私、この後撮影があるので、今日のところは失礼します」
茉奈は職員室を出て行った。
「本当に申し訳ありませんでした」
お母さんは深く頭を下げて職員室を出る。
私は無言でお母さんの後ろについていく。
「麻衣子。どうしてあんなことしたの?」
「・・・」
「今回は茉奈ちゃんが許してくれたからいいけど。人のもの取るなんて」
「私じゃない」
「いい加減にしなさいっ!」
初めて聞いたお母さんの怒鳴り声。
「麻衣子。明日謝りに行くから」
「・・・」
家に帰ると玄関にお父さんが立っていた。
「麻衣子。財布盗んだってホントか!」
「・・・」
パチン
私はビンタされた。
「あなたっ」
「自分がしたことわかってるのか!?」
私じゃないのに・・・。
私は部屋に行く。
「おい!麻衣子っ!」
私は泣かない。
泣いたらあいつらに負けたことになる。
だから絶対泣かない。
いつかあいつらに復讐してやる。
拳を強く握る。
そして、あの話を思い出した。
「あの子にお願い事をしたら、あいつらに復讐できる・・・」
私はその子のことについてネットで調べた。
野崎中、山田紗那。当時中学2年生。
紗那ちゃんは真夜中の学校で首を吊って亡くなった。
いじめ原因だった。
でも、学校側がいじめを隠した。
その日を境にいじめっこたちが次々に行方不明になった。
いじめに関わった先生やクラスの人たちも亡くなった。
そして、その教室は今。
立ち入り禁止になっている。
その場所までは書かれていなかった。
私は自分でその場所を探した。
うちの中学は建物が古いため立ち入り禁止の場所が多い。
私は休み時間になるとその場所に行きおまじないをした。
「どうか私に力をお貸しください」
何週間経ても紗那ちゃんは現れなかった。
その間にもいじめられた。
牛乳をかけられたり、物を隠されたりした。
「凜。お願い。たすけて。茉奈にやめさせて」
私は凜の腕を掴んでお願いした。
バッ
「え?」
「私、もう麻衣子と友達じゃないから」
凜は私の腕を振りふほどく。
そして、茉奈たちの方に行った。
「凜・・・」
私はいじめられたことより凜に裏切られたことが一番辛かった。
凜だけは私のこと見捨てないと思っていたのに。
凜のこと信じてたのに。
私は早く紗那ちゃんを見つけてお願いする。
あいつらに・・・。
1か月後。
いじめは茉奈たちだけじゃなくクラスのみんなからも受けた。
先生に相談したが信じてくれない。
それどころか、いじめはもっとひどくなった。
ガチャ
「ただいま・・・」
この日は違和感を感じた。
いつもなら仕事でいないお母さんとお父さんの靴がある。
「お母さん?お父さん?」
リビングに行くと椅子に座っていた。
「麻衣子。話があるからそこに座りなさい」
私は言われたとおり椅子の座る。
「今日パパね。仕事首になったの」
「えっ」
「天壌さんの会社との取引が白紙になって・・・」
「それって。私が財布取ったから?」
「・・・」
「私、取ってないのに!なんで!パパが首になるのよ!」
「お母さんもな、今の仕事場の人にひどいことされて辞めることになった」
「麻衣子。ごめんなさいね。ママが我慢したらいいのに・・ううっ」
「麻衣子。もうこの街にはいられない。どの会社にも天壌さんが絡んでるからな。だから、引っ越ししよう」
「私・・・」
私は家を飛び出した。
「麻衣子っ」
私は走る。
茉奈の家に全力で走る。
ピーンポーン
「あら。麻衣子ちゃん。茉奈は仕事中だけど」
「おばさん。茉奈じゃなくて、おじさんに会わせてください」
「分かったわ。今、門開けるね」
大きな門がガラガラと大きな音を立てて開いた。
「麻衣子様。こちらへ」
使用人の人が案内する。
コンコン
「旦那様。茉奈お嬢様のお友達の麻衣子様がお見えです」
「ああ」
ガチャ
「失礼します」
おじさんは大きな椅子に座っていた。
「では、私はこれで」
そう言って使用人の人は部屋を出た。
「あの・・・」
「君が茉奈の財布を取ったと聞いたよ」
「・・・」
「まあ、茉奈も許してるみたいだから」
「パパのこと。いや、菅保一郎を首にしないでください」
私は土下座した。
「お願いします」
「・・・。私には何のことか」
「えっ」
「私は君のパパの社長じゃない。君のパパを首にしたのは君のパパの会社の社長であって私ではない」
「でも、おじさんの会社と取引が白紙になったからで。だから、もう一度考えてくれませんか?」
「ビジネスとはこうゆうものだよ。いらないものは捨てる。必要なものだけを残しておく。そうゆうものだ」
『あ。そうだった。この人は茉奈のお父さんだ。何言ったってこの家族に勝てるわけない』
私は立ち上がり部屋を出た。
そして学校に向かった。


< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop