【完】ズルい瞳[短編]
結局。
「村瀬さん、創作の邪魔しちゃってゴメンなさいねぇ。先生、今から職員会議だからここにはもう顔は出せないけど、鍵掛けるの忘れずに気をつけて帰るのよぉ?」
「あ……は、はい」
「じゃあ、村瀬。また明日な」
「…………」
蒼ちゃんの言葉には何故か返答する気も起きなかった私は
静かにデッサンの続きを始めていく。
それが私の
蒼ちゃんに出来る唯一の小さな小さな反発だ。
それから、ゆっくりと美術室の戸は閉められ
もともと静かだった空間は更なる静寂を迎えた。
「車……か」
私の知らない蒼ちゃんが次々と現れて
まるで別人なんじゃないかとも疑ってしまう。
でも
逆にそうだったら、どんなに良かったことか。
「こんなに苦しいなら……出会わなければ良かった」
私の溜め息は、油絵の具の中に混ざって
複雑な色へと変化していった。