【完】ズルい瞳[短編]
雨の音を聴きながら、創作展に出品するデッサンに油絵の具をのせていく。
何も考えず絵のことだけに集中出来る、この時間は
私に安心と安らぎをもたらしてくれるから好き。
特に今は蒼ちゃんのことで、とかく不安定になりがちな気持ちも
キャンバスの前に座ると、不思議と穏やかな心を取り戻すことが出来た。
そして、時間すら忘れて絵の世界に没頭してしまうのが私の悪い癖なのだけど。
だから
「おい!お前いったい今、何時だと思ってるんだ!?」
血相を変えた蒼ちゃんが飛び込んできて初めて
事の事態を把握する。
「え?」
「え?じゃねぇよ!5時過ぎに警報が出て、学校に残ってる生徒もソッコー帰宅するようアナウンスが流れたろうが」
「え……そうだったんですか?」
「はぁ……ったく、お前って奴は。絵に集中すると他のことが見えなくなるの相変わらずだなぁ」
心底呆れたといった様子の蒼ちゃんは盛大な溜め息をついて見せた。
「ご、ごめんなさい!私、帰ります」
慌てて片付けを始める。
だけど
「帰るって、どう帰るつもりだよ?」
「え……?」
「雨の影響で、ここら沿線の電車すべて運休だぞ?」
「…………」
この時はじめて
私は自分の犯してしまった過ちに気付くワケで。