【完】ズルい瞳[短編]
ねぇ、蒼ちゃん。
担任の先生は普通そんなこと聞かないよ?
そもそも
雨だからって生徒1人を自分の車で送るなんてこと
………絶対にしないよ。
「ラーメンでも食いに行くか?あったまるしな」
「………」
だから、蒼ちゃん。
それは……やっちゃダメなことなんだよ。
「あおい?」
そうやって名前で呼ぶことも
「おい、どうした?」
心配そうな瞳で見つめてくることも
全部、ぜーんぶ
私を勘違いさせてしまうから。
“教師と生徒”と言うカテゴリで
最初に一線引いたのは
蒼ちゃんの方じゃん。
「お、お気遣いなく。夕飯は母が既に用意してあると思いますので」
「え……祥子さんって、そんな人だったか?」
そう仕事仕事で、ママが留守がちな私を心配して
蒼ちゃんママがいつも私の分の夕飯まで用意してくれてたんだっけ。
そんなママを昔からよく知る、蒼ちゃんだからこその言葉。
「………だ、大丈夫です。ありがとうございます」
それでも私の口は頑張って頑張って
何とか“お断り”の呪文を唱えることが出来た。