【完】ズルい瞳[短編]



【美術室の冷房が壊れちゃったから、今日の活動は中止ね♪】




という、萌香先生からの緊急メールを




「………遅いよ」




美術室の窓を開けた直後に受信する。




萌香先生がそそっかしいのは、今に始まったことではないけど




部長としては悩みのタネだ。




「…………」




このまま帰ることも出来たのだけど、描きかけのデッサンを見てしまったら




創作の意欲も湧いてきてしまう。




「描こうっと」




帰宅を諦め、デッサンの準備に取り掛かる。




そして




キャンバスに筆を乗せ始めた頃




静寂な美術室の廊下を、気忙しく走るスリッパの音が鳴り響いてきた。




きっと萌香先生だろうと思っていた、その足音の正体は




「お前、何してんだよ!?」




息急き切らした蒼ちゃんだった。




「今日部活休みって聞いてたのに、気付けばここの窓が開いてるからよぉ」




「あ……そうですね」




「そうですねって……お前なぁ?こんなとこでやってたら確実に熱中症になるだろが」




「でも午前中はまだ、そんなに暑くないですし」




だから描こうと思ったくらいなのだから。




「バカっ!お前はすぐ時間を忘れて熱中しちまうだろが」





た、確かにそうかもしれないけど




だからって




バカはないよ。




< 33 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop