【完】ズルい瞳[短編]



あの後……。




あの……キスの後……。




*****




重ねられた唇が離れたかと思ったら




「悪い……つい本能的に……」




「………」




「疲れてんだな、俺。ちょっと頭冷やしてくるわ」




蒼ちゃんはそう言うと、慌てて部屋から出て行こうとしてしまう。




「ま、待って蒼ちゃ……」




咄嗟に伸ばした指先は少しだけスーツの端をかすめたけど




結局、何も掴めないままに……その指先は空だけを切った。




「………蒼ちゃん」




力無く、その場に立ち尽くすことしか出来ない私。







“悪い”なんて




謝らないでよ。




どんなに衝動的なものだったとしても




たとえ……誰かと間違えてしまったものだとしても




それでも私は




私にとっては初めてのキス。




それが蒼ちゃんであったことが




何より嬉しいのだから。





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