【完】ズルい瞳[短編]
あの後……。
あの……キスの後……。
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重ねられた唇が離れたかと思ったら
「悪い……つい本能的に……」
「………」
「疲れてんだな、俺。ちょっと頭冷やしてくるわ」
蒼ちゃんはそう言うと、慌てて部屋から出て行こうとしてしまう。
「ま、待って蒼ちゃ……」
咄嗟に伸ばした指先は少しだけスーツの端をかすめたけど
結局、何も掴めないままに……その指先は空だけを切った。
「………蒼ちゃん」
力無く、その場に立ち尽くすことしか出来ない私。
“悪い”なんて
謝らないでよ。
どんなに衝動的なものだったとしても
たとえ……誰かと間違えてしまったものだとしても
それでも私は
私にとっては初めてのキス。
それが蒼ちゃんであったことが
何より嬉しいのだから。