死せぬ者
その言葉は爆音で遮られた。
急いで二人は大広間へ行く。
臨戦態勢でそれぞれが人間軍の者と戦っている。
「鬼、も大したことないわねぇ……」
妖艶に呟く声はどこか懐かしかった。
「ねぇ?」
女の方を見ると、ヴォルフラムは睨む。
「ヴォルフラム……それが、今の名前ね?」
そう言って歩み寄る。
「ふふふ……ねぇ、何度も失うのはどんな気持ち?」
「——タナトス。」
古い記憶を遡るように言葉を紡ぐ。
「人間は嫌いではなかったか?」
「そうよ。」
「では、何故、此処に居る。」
「面白そうだから。」
タナトスと呼ばれる女性は言った。
「絶望し続ける貴方を私は見たい。」
「それだけの理由か。」
「えぇ。……ねぇ、気付かない?貴方が大事だと思った人は寿命では死んだりしないこと。」
それを聞いて、ヴォルフラムはハッとした。
思い返せば、そうだ。
最初に愛したひとも、友人も、殺された。
親のように育ててくれた存在も、病死した。
次は誰かなど、考えるまでもない。
背後に居る人間と戦う愛おしい人を見る。
「アリシア……」
「え?」
アリシアは振り返る。
妖艶な笑い声がした。
「きゃ!!」
背を斬られ、アリシアは倒れた。
「アリシア!!」
「ヴォルフラム……」
駆け寄り、抱き上げるとアリシアは笑う。
「私に構ってる場合じゃないよ。」
「喋るな。」
「傷は浅いわ……大丈夫。」
そう言って、手を伸ばした。
頬に冷たい手が触れる。
「だいすきよ。」
そう言った気がした。
タナトスは嗤う。
「ほら、今もひとり。」
「貴様!!!」
ヴォルフラムはタナトスを睨む。
「それが、貴方の罪よ。」
そう言うタナトスの手には白い鎖があった。
「冥府の鎖は貴方を逃がしはしない。」
鎖を振り回し、周りを一掃するように捕らえる。
その重みに苦しむ声が響いた。
「それは貴方達の罪。」
そう言って触れる。
「私が触れたとき、痛みへ変わる。……罪の痛み、思い知った?」
悲鳴が響くのを面白そうにタナトスは見た。
「ヴォルフラム。貴方は永遠にひとり。輪廻の果てに絶望する運命よ。」
そう言って歩み寄る。
「知ってるはずよ。私は貴方を赦さない。」
その言葉を最後に暗闇が視界を覆う。
——足元には骸。
血の海に沈む身を他人事のように感じていた。
“このまま死んでしまえばいい”
そう思い始めたとき、その身をすくうひとが居た。
急いで二人は大広間へ行く。
臨戦態勢でそれぞれが人間軍の者と戦っている。
「鬼、も大したことないわねぇ……」
妖艶に呟く声はどこか懐かしかった。
「ねぇ?」
女の方を見ると、ヴォルフラムは睨む。
「ヴォルフラム……それが、今の名前ね?」
そう言って歩み寄る。
「ふふふ……ねぇ、何度も失うのはどんな気持ち?」
「——タナトス。」
古い記憶を遡るように言葉を紡ぐ。
「人間は嫌いではなかったか?」
「そうよ。」
「では、何故、此処に居る。」
「面白そうだから。」
タナトスと呼ばれる女性は言った。
「絶望し続ける貴方を私は見たい。」
「それだけの理由か。」
「えぇ。……ねぇ、気付かない?貴方が大事だと思った人は寿命では死んだりしないこと。」
それを聞いて、ヴォルフラムはハッとした。
思い返せば、そうだ。
最初に愛したひとも、友人も、殺された。
親のように育ててくれた存在も、病死した。
次は誰かなど、考えるまでもない。
背後に居る人間と戦う愛おしい人を見る。
「アリシア……」
「え?」
アリシアは振り返る。
妖艶な笑い声がした。
「きゃ!!」
背を斬られ、アリシアは倒れた。
「アリシア!!」
「ヴォルフラム……」
駆け寄り、抱き上げるとアリシアは笑う。
「私に構ってる場合じゃないよ。」
「喋るな。」
「傷は浅いわ……大丈夫。」
そう言って、手を伸ばした。
頬に冷たい手が触れる。
「だいすきよ。」
そう言った気がした。
タナトスは嗤う。
「ほら、今もひとり。」
「貴様!!!」
ヴォルフラムはタナトスを睨む。
「それが、貴方の罪よ。」
そう言うタナトスの手には白い鎖があった。
「冥府の鎖は貴方を逃がしはしない。」
鎖を振り回し、周りを一掃するように捕らえる。
その重みに苦しむ声が響いた。
「それは貴方達の罪。」
そう言って触れる。
「私が触れたとき、痛みへ変わる。……罪の痛み、思い知った?」
悲鳴が響くのを面白そうにタナトスは見た。
「ヴォルフラム。貴方は永遠にひとり。輪廻の果てに絶望する運命よ。」
そう言って歩み寄る。
「知ってるはずよ。私は貴方を赦さない。」
その言葉を最後に暗闇が視界を覆う。
——足元には骸。
血の海に沈む身を他人事のように感じていた。
“このまま死んでしまえばいい”
そう思い始めたとき、その身をすくうひとが居た。