死せぬ者
抱き上げられると、視界が明るくなった。
相手の顔ははっきりと見えない。
わらうような、なくような表情だった。

目を覚ますと、同じ場所だ。
目の前には同じ場所でありながら全く違う景色があった。
争う様子もなく、人間と鬼は共存している。
聞く話では、現在は争っていた種族も戦を止めたようだ。
種族が細かく分かれていて、それがまた混在しているため、一昔前までの差別や偏見は皆無に等しい。
だが、鬼が人間を捕食したり、その逆もあったりと物騒な世の中ではある。
「平和だな。」
思わず、呟いた。
「平和だと感傷に耽っているところ、失礼。」
振り返ると橙の髪の男が居た。
「其処は立ち入り禁止区域だ。何故此処に居る。」
「……?」
訳がわからない表所で居ると、相手は溜息をついた。
「軍管理の元施設に居るなど……機密情報目的か。」
「いや」
立ち上がり、相手を見る。
「俺は此処に居た。」
ぽつりと言うと、辺りを見回す。
「……そうか。」
また、転生したのだと解って自嘲する。

彼は再び得た人生でどう生きるのか。

「ふふふ……」

死を司る断罪者は微笑む。
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