来い恋
その日の夜は一人寂しく夜を過ごした。
翌日、出社するといつもは誰もいない事務所に次長がいた。
「次長、おはようございます。今日は早いですね~」
呑気に挨拶をすると
次長が待ってましたとばかりに駆け寄り
「吉野ちゃん!頼みがあるんだ」と頭を下げる。

「次長!頭上げてください。・・・頼みって・・・何です?」
「京都に行って欲しいんだ」
「京都?」
京都って言えば昨日亮輔さんが渋々行った出張先だ。
「原田課長が大事な書類を忘れて行ってね。
いつもはこんなミスしないんだが、今朝、僕の携帯に電話があり
書類忘れてしまったからもし吉野ちゃんに急ぎの仕事がなければ
京都まで届けてほしいっていわれてさー。
本当に大事な書類なんだよ。吉野ちゃん頼まれてくれんか?」
まさか・・・・わざと・・じゃないよね?
昨日の何とも言えぬわざとらしさを思い出す。
「吉野ちゃん。」
「あ!はい・・・私でいいですか?他の営業さんとか・・」
「今日は、みんな忙しいんだよ。申し訳ないが今から頼むよ」
「・・・・はい。わかりました」
私は、書類を受け取ると一旦マンションに戻り着替えをして
新幹線で京都へと向かった。

前途多難の京都出張の始まりだった
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